西村則昭『アニメと思春期のこころ』、創元社、2004
- 作者: 西村則昭
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2004/08
- メディア: 単行本
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基本的にはアニメヒロインをアニマと捉え、思春期の少年少女の精神/身体的な変化に影響を与えている、という立場による考察になっています。感心したのは、このような「○○が語るアニメ・マンガ」的なものは、オタク当事者から見れば往々にして見当違いな見解を述べているものが多いものなのだけど、この著者はかなりアニメに詳しい…というか本人もアニメ好きなんだろうな、といったいい印象の考察が多かったところです。ドラグ・スレイブの詠唱を全文書き出して「この『黄昏より昏きもの』とは魔王シャブラニグドゥのことだ」とか大真面目に書いているんだからある意味感心します。また、そういったかなり踏み込んだことをしながらもオタク談義に陥ってしまっていない慎重さはさすが臨床心理士、といった感じです。ですから終始真面目な考察になっています。
個人的に感心したのは「美少女アニメを見ている男性は、ヒロインに感情移入している」とサラッと指摘されていたところでした。よく「男性はアニメのヒロインをして女性を消費している」といった見解を見ますが、これはいささか安直な見解で、実際には視聴男性はヒロインに一度感情移入するからこそそのキャラクターにハマれるのだ、というのが個人的な見解です。それを許すようなキャラクターはヒットするし、上記のように単に消費されるだけのヒロイン像はそれこそすぐに消費されてしまって残らない、という気がします。もちろん女性が女性キャラクターにする感情移入とは別種のものだと思いますが。
とにかく面白いし真面目な一冊でした。カウンセリングや90年代アニメに興味のある方にはマジオススメです。