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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

立命館とかpixivとかの件に関する問題整理と私見(どっちもどっち)。

※201705311230 追記としてブックマークコメントへ返信をしました。
※201705271200 追記としてブックマークコメントへ返信をしました。
※201705261455 オチを「真っ黒」から「グレー」に修正しました。趣旨は変わっていません。
※201705261400 タイトルに「問題整理」を付け、一部文言を加筆・修正しました。趣旨は変わっていません。

※201705261025 タイトルに(どっちもどっち)を付け、一部文言を加筆・修正しました。趣旨は変わっていません。

www.buzzfeed.com

今日、世間様を賑わせたこの話題、立命館の院出身でpixivに連載記事を持っていた私としては、結構自分事としてしっかりウォッチしていました。せっかくなのでこの件での私見をまとめておきたいと思います。

 

結論から言うと、研究者サイドとpixivユーザーサイド、どっちもどっちです。

 

まずは研究者サイドの問題点について、上記の記事に則して見ていきます。

 

  • 固有のURLと作者名を明記し、個人と作品を特定可能にしていること

これは後述する引用の要件の一つなので、むしろないといけません。著作権法違反になります。

 

  • 本来、18歳以上でないと閲覧できない(ゾーニングされている)小説を「有害表現」として恣意的に取り上げ、不特定多数の目に触れる形で公開していること

今回取り上げられた小説は投稿者自ら有害表現だと判断したからR18に設定されていたと考えるのが妥当です。有害表現を有害表現として恣意的に取り上げるのは、当たり前のことです。

また、一般なら有害表現とされるものでも学術目的であれば不特定多数の目に触れる形で公開されるということは普通にあります。たとえば医学書にはモザイクなどはかかっていませんし、R18でもありません。

 

  • 作者に無断で研究データとして使用していること(学術的引用として認められるのか)

ドキュメントは現在非公開になっていますが、方々でアップされているスクリーンショット等を見た限りでは学術的引用と言っていいものでした。学術的引用であれば、無断利用に法的な問題性はありません。

 

pixivの利用規約では、禁止行為として「本サイト及び関連サイトにアップロードされている投稿作品の情報を、当該著作者(創作者)の同意なくして転載する行為」を明記している。

著作権法に定められた引用である以上、規約は問題ではありません。仮に日本国内に「我が家では殺人してもOK」という家庭があっても、実行すれば普通に逮捕されるのと同じです。pixivの規約より法律の方が上の概念なのです。

 

研究・教育利用は通常の著作権よりも広く認められており、「学術的引用」の範ちゅうとも捉えられる可能性はあるが、ユーザーの批判の多くは、モラルや倫理に即した部分にも向けられている。

この後半部分はその通りで、結果的に該当作品が非公開になってしまったことを考えれば、研究倫理には反していたことになります。

ただこれは結果論であって、普通の人同人文化にそれほど詳しくない人・今回でいえばR18の該当のpixivクラスタ外の人は「著作権法違反の2次創作R18作品をネット上に自分の意志で公開するような鋼の精神を持った人が、他所で引用されたくらいでショックを受けるほどナイーブ」なんてことは想定していません。

加えて言うと、R18というタグには本来「18歳未満は閲覧禁止」以外の制限能力はなく、特定クラスタの文化について理解と了解があることなどは求められないのです。それが作品を公開するということだし、それが嫌なら公開しない(Webにアップしない、もしくは鍵をかける)ことです。

二次創作クラスタの特殊性を前提に今回の件の良し悪しを論じるのは「俺ってこんなに繊細でこういう風に接しないとダメだからそうしなかったお前ダメ!」みたいな話ですのでナンセンスです。

 

もちろん研究者は本来普通の人よりはその辺りに繊細であるべきだし、結果的に関連する人たちにショックを与えて作品を非公開にしてしまったのですから、間違いは間違い、ダメはダメです。後進の研究者はこの分野の研究をする際は気を付けましょう。

 

やおい、BLに関する著書もある社会学者の金田淳子さんは、Twitterで「他者が趣味の範囲で書いたものを実名でなくともその人と特定できる形で了承を得ず公表するのはまずい」「研究倫理的にかなり微妙だと思う」と指摘している。

これも上記と同じく、倫理的には微妙というか、結果で言えばダメでしたと言えるでしょう。

 

これもその通りなのですが、pixivにR18コンテンツをアップする人たちが文化人類学的な観察対象と言えるほど自分と異なった文化を持った存在だという認識が先にあったか? という話が前提として必要です。

 

繰り返しますが、結果的には「pixivにR18コンテンツをアップする人たちは文化人類学的な観察対象と言えるほど独自の文化を持った存在だった」ので、今回の件はいいか悪いかでいえば悪かったと思います。

 

というところです。

一方、当の発表の内容自体の出来は、正直あまりよろしくないように思います。

jsai2017:2M2-OS-34a-1 ドメインにより意味が変化する単語に着目した猥褻な表現のフィルタリング

Web上に投稿される情報の中には青少年にとって有害な情報,特に猥褻な意味を持つ言葉は直接記述されず暗喩により表現されることが多い.

現在pdfが非公開となっているため上記ページの概要から論じますが、まず「有害な情報」と言い切っているのがまずいです。作品が「猥褻」かどうかもかなりあいまいな判定をしているのが現状なのに、「有害」かどうかとなると、その検証(何をもって作品を有害とするのか)を先にする必要があります。

ここはせめて「有害とされている情報」と書き、本文中で「有害とされているもの」の定義をする、とした方がよかったかなと思います。

 

提案手法の有用性を評価する実験をR-18指定の小説を使い行った.

これもよくないですね。Web上でのフィルタリング手法に関する研究なのでWeb小説を使った、ということだと思いますが、普通に考えて「Web上に投稿される情報の中には青少年にとって有害な情報」の中で大きなインパクトを持つのは画像と動画の方でしょう。何故わざわざ「直接記述されず暗喩により表現されることが多」い程度のインパクトの弱い「小説」を研究対象にしたのかがまず問われます。

また、Web上のフィルタリングに関する研究だからWeb上の作品を対象にするのはいいとして、何故Web上に今ある作品でないといけなかったのでしょう。Web発で出版されているものを研究対象にすれば、今回のように非公開設定になったから追跡調査できません、ということもなかったはずです。

「ランキング上位の作品を抽出する必要があったから」というのは理由になりません。ランキング上位の作品10作品がWeb上の小説を代表する10作品とも言えないからです。作品数も少なすぎるし期間も限定的すぎます。

一方、出版されているものであれば売り上げなどを調査することで人気=代表的なものを抽出することは可能です*1

 

実際のところは、pixivのR18小説(絵ではなく)を選んだ理由は、おそらく「文字ベースの作品の方が検索や解析がし易かったから」であり、研究テーマそのものも後付けなんじゃないか? と思います。

 

というわけで発表としてはあまりよろしくない出来だと思います。

が、人には出来の悪い作品でも発表して公開する権利や自由があるので「世に出してはいけないものだ!」とまでは言えません。

学会での発表ですから、上記レベルのことは発表後学会でコテンパンに言われるでしょうし、今頃修正することになっているでしょう。

 

というわけで発表者に関しては「結果的に悪かった」と思います。

 

あと一点、これは発表者ではなく学会側の対応ですが、公開を停止したのはいただけませんね。引用だったのかそうではなかったのかの検証ができません。

まあこれは「違法ではないが一部不適切(倫理的に)」だったから下げた、ということでしょう。

 

 

次、pixivユーザーサイドに関して。

上記ニュースも何故か研究発表者にのみフォーカスを当てていますが、今回の件でのpixivユーザーサイドの反応も問題ありです。

 

 

まず前提として、上記の通り引用は法的には問題はありません。倫理的には問題がありますが、それを理由に氏名も所属も公開されている個人を攻撃するのは、それこそ誹謗中傷です。

 

ペンネームや作品URLを公開するなんて個人情報保護法違反だ! という方もいました。第一に、個人情報保護法は事業者や自治体に課されるものであって、個人は対象外です。この点で、発表の著者は問題ありませんが、pdfを公開していた人工知能学会はグレーと言えなくもないかもしれません(後述する通りかなり薄いグレーですが)。

第二に、ペンネームや作品URLでは特定の個人を識別できないため、個人情報保護法における個人情報とは言えません。強いて言えば、著作者がコミケにサークル参加して売り子などしていた場合は、URLから足がつく恐れがあるので、グレーと言えばグレーです。それでも、目の前にいる売り子が本当に著者かどうかは識別できないので、かなりホワイトめのグレーと言えるでしょう。

第三に、そんなに大事な個人情報なら、引用されるされないの如何にかかわらず危険なので、ネットに上げとくなよって話です。

 

二次創作を研究対象にしていることについての指摘もありましたが、pixivのR18小説のトップ10を抽出したらたまたま二次創作だったというだけで、元々二次創作を対象とした研究ではありません。

違法性のあるものを研究対象にしていいのか? という点についてはなんともですが、それを言い出すと二次創作のあらゆる研究ができなくなってしまいます(これは戦争や犯罪の研究にも同じことが言えるでしょう)。

強いて言えば、発表の中で「これら創作物は著作権者に無断で著作物を利用した違法性の高いものです」と付記しておく必要はあると思います。

 

次にモラルの問題ですが、R18二次創作小説をわざわざネット上に公開している人がそこまで繊細かどうかなんて、普通の人には分かりません。自分らのコミュニティ内でのルールやマナーを前提にし過ぎです。

 

「アカウント作成が必要なサービスで、さらにR18指定までしてゾーニングしてたじゃないか!」という声もありますが、pixivの場合ゾーニングになっていません。たとえば書店でR18本を買う際には書店員によるチェックがありますが、pixiv内でアカウントを作ることにもR18コンテンツを見ることにもチェックは存在しません。事実上の公開状態です。

 

同好の志と楽しみたいだけだったのに晒しものにするなんて! という声も見ましたが、これは完全にバカッターと同じ理論です。バイト先の飲食店の冷蔵庫に入った画像を仲間内で見せびらかす目的でツイッターに上げたら思いの他拡散してバイトを首になった、おいお前ら何してくれてんだよ、俺はただ友達に見せたかっただけなのに…他人に見られて困るものはツイッターに上げるなよって話です。

 

精神的に苦痛を受けた! という声もあり、実際に苦痛を受けたことはお気の毒ですが、引用されること、批評されることは作品を公開する上で伴う責任です。

 

どうも、pixivユーザーサイドの意見は「作品を世に公開することに伴う責任」についての意識が希薄なものが多いように感じます。

二次創作については著作者からのお目こぼしでやっていながら(法的には黒)、一方で自分の作品の引用や批評(どちらも法的には白)には繊細さへの配慮を要求する、というアンバランスさを感じます。

 

とりあえず藤子・F・不二雄先生の名著「エスパー魔美」を読んで、世に作品を公開することの意味を考えた方がいいと思います。この件抜きにしても面白いのでマジオススメです。

d.hatena.ne.jp

 

 

あと最後にpixivの反応。個人的にはこれが一番マズいなと思いました。

このツイート、「なんじゃこりゃ?」と思った方も多かったようで、リプライにて何人かの方が指摘をしていました。

転載(文章や作品をよそで使うこと)と引用(転載のうち、著作権法で定められ法的に認められたもの)は個別の概念であり、どっちか、もしくはどっちでもない、ということはあっても、どっちも、ということはありません。もし引用と転載の違いが分かっていればこういう書き方はしないはずです。

 

つまり、社内に著作権に関する専門家は元より、ちょっと知った程度の人間もいない、もしくは広報サイド(ツイッター運営担当者)と連携が取れていないということの証左になってしまっています。これはコンテンツに関わる企業として相当ヤバイですし、特にpixivは二次創作コンテンツの宝庫で著作権違反が常態化していますからなおさらです。

 

 

 

というわけで、どっちもどっち&pixivさんは大丈夫? という感じでした。

上記ツイートによるとpixivは立命館大学に対し「経緯と事実関係の確認および対象ユーザーとの問題解決を要請しております。」とのことなので、何か進展はあるでしょうから、引き続き見ていきたいと思います。

立命が「法的には問題ないけどモラル的にはダメだったね! ごめんね!」って表明して終わり、って感じかなあと思います。

 

 

あとどうでもいいけど、最初に紹介した「モラルを疑う」とぶち上げているBuzzFeeDの記事中のツイッタースクリーンショットは全文転載なので引用の要件を満たしていませんし、ツイッター規約違反なのでモラルどころか法的に真っ黒なのでした(オチ)。そっちも同じくモラルの上でグレーなのでした。

 

※追記

上記の修正について。引用は原則引用元の一部のみ、コピーであれば全体の50%まで、という慣例から当初「真っ黒」としました。ブックマークにてご指摘を受け改めて法律家に確認したところ「ケースバイケース」とのことでしたので修正しました。ご指摘いただき、ありがとうございました!

 

上記の記事の場合、全文引用である他、引用元の情報を加工してしまっているので、引用の要件を満たしているか否かについては議論の余地があります(どちらも、別にいいというケースもあります)。
引用でない場合、ツイッター利用規約上はAPIでの埋め込み以外(スクショ)の掲載は規約違反です。今回のケースの場合、投稿者に許諾を得ているため、それでも規約違反になるか? については、
本人が許諾してるんだからいいじゃんという意見も、本人が「やっぱり掲載やめて!」と思った時にそれが自分の意志でできない(APIの埋め込みであれば非公開にすることで可能)のでダメという意見も成立します。
なお、学会のレポートそのものは著作権法32条第2項により転載OKと考えられます。一方、現在非公開になったものをスクショで公開し続けさらに加工まで施すことについてはグレーです。

いずれにせよ、真っ黒とまでは言えないので、グレーと修正いたしました。どうでもいいところでオチにさらに変なオチがついてしまいました。。

 

(追記)ブックマークコメントへの返信

ブックマークやコメントありがとうございます。いただいたコメントでレスできていなかったものについて、こちらで返信させていただきます。

 

POTPOTATO さん

>どっちもどっちという事は無いと思います。今回の件はpixivユーザーにとって完全な奇襲になってしまっています。

>また自分の価値観だけが普通で異なる価値観を持つ人は普通でないという考えは極めて傲慢なものです

まさにおっしゃる通りで、「今回の件は完全に奇襲だ」という、pixivユーザーサイドにとっては普通の価値観が、異なる価値観を持つ人にとってはそうではない、という話です(pixivユーザーサイドが「極めて傲慢」とは私は思いません)。

既に公開されているものを引用し別の場所で公開することが「奇襲」と捉えるのは、特定のクラスタでない人が理解できなくても仕方ありません。

記事内に書きましたが、R18であることは「18歳未満には有害たりえる表現があるので閲覧を禁じます」という以外の意味はありません。特定クラスタに理解の無い人が読むことは制限できないのです。

私が研究者サイドのことを「普通」と書いたのが理解が深まらない原因だと思うので、該当箇所を「同人文化にそれほど詳しくない人」と書き直しました。「普通VS特殊ではなく、特殊VS特殊(前提:みんな特殊)」です。

 

 

amamako さん

>よくまとまっているまとめ。Pixivはこれかなりまずいよなぁ。

ありがとうございます。pixivはユーザーサイドに立って見せたいがために先走っちゃった感がありますが、発言から察するに、全部明らかにするとユーザーサイドが不利というか、今後サービスを不便なものにするしかないという状況をよく分かっていない気もします。どうなるんでしょう。。

 

ChieOsanai さん

>はぁ? なんでこれでどっちもどっちになるんだよ。論文の出来なんて関係ないだろ。

前提として、該当のドキュメントは研究途中というかスタート段階の構想発表用のもののようですので、まだ論文と呼べる段階ではないと考えられます。なのでこの記事内では「発表」とさせていただいています。

発表のドキュメントのクオリティと、研究に対する姿勢の良し悪しは不可分です。仮に発表の質が良かったなら、そもそももっと調査対象クラスタについて入念に調べ、相手先の価値観を念頭に置いた調査方法をとったでしょうし、そうすれば今回のようなトラブルを避けられたかもしれません。

そのため、発表の出来が今回の件に「無関ない」とは言えないと思います。なので発表内容そのものについても記事内で取り扱いました。

ただし、研究の出来が悪かったことだけがトラブルの原因であり、それこそが犯人だ、とも思いません。上記のポットポテトさんへのレスにある通り「公開されている作品の引用はできて当然VS同好の志以外のいるところに人の作品を無断で公開するなんて奇襲だ」という価値観の相違や、pixivユーザーサイドの過敏な反応、作品を公開するということへの認識の甘さも原因だと思います。

第一、出来が悪いことが罪だなんてことになったら、研究も同人活動もどっちも共倒れですね。

というわけで、発表の出来は今回の騒動の原因の一つではあるが、原因はいろんなところにあり、だからこそ「どっちもどっち」だと私は思うのです。

 

turanukimaru さん

>"普通の人は「(略)2次創作R18作品をネット上に自分の意志で公開するような鋼の精神を持った人が、(略)ナイーブ」なんてことは想定していません。"。相手の人間性を想定する気はない、ということ?流石にそれはちょっと

 

相手の人間性を想定する気はない、ということではありません。

既に公開されている作品を引用・批評するのは方でも認められた公然の行いであり(だから法律で認められているのです)、人格攻撃でも何でもなく、それをされたら傷ついた、なんてことは、想定外でも仕方ない、ということです。チエ・オサナイさんへのレスにある通り、想定できてたらよかったとは思いますが…

実際、件の発表の概略では著者の人格や人間性には触れていません。今はドキュメント自体が非公開になっているので確認しようがありませんが、おそらく中身もそうでしょう。

R18と著者自ら指定してある作品を有害作品と呼称することや、ドキュメント内で特定のキャラ名を出すことなどは、不用意だとは思いますが、著者の人間性の否定とは言えません。そう捉えるのは繊細過ぎる、というのが私の考えです(ドキュメント内でもし著者への誹謗中傷や人格攻撃がされていたら、話は別です)。

 

ところで、今回は情報系の研究でしたので「人格攻撃はNG」を前提としましたが、文学などの作品研究や評論畑では、作品の作者への人格攻撃など日常茶飯事ですよ。

最近ひどいと思ったものを以下ご紹介しますが、作品を公開するということは、こういう理不尽とも思える批評にも晒されるということと表裏なのです。個人的には、こういうのはイヤですけどね。

www.excite.co.jp

 

lenhai さん

>BuzzFeedのは32条「引用」ではなく41条「時事報道のための利用」だから引用要件は不要ではとの指摘かな

ありがとうございます! その条項は見落としていました。大変勉強になりました。専門家はこの条項を前提に話してたのかもです。

 

>該当作品が非公開になると研究倫理に反するという理屈が不明

①追跡調査や検証ができず、研究のクオリティを上げられないから

②後進が同じクラスタを対象にした研究がしにくくなるから

③これらを想定して対象に慎重に接するべきだったのにそうしなかった

 

という「研究としてよくない」という点に加え、

 

④作品を非公開にさせることは社会の発展を阻害するから

 

というのもあると思います。というのも、情報理工学は応用研究であり、社会の発展に寄与するものであるべきで、今回のアマチュア小説に限らず、ある作品を非公開に追い込むことは、社会の発展に対してマイナスという立場をとるのが妥当です。研究者自身、研究の公開で成り立っているわけですし。

ただ、今回は研究者のうかつなところと対象クラスタの繊細なところがかち合った哀しい出会いだった面もあるようですので「研究倫理に反する発表だ」というよりは「結果的には研究倫理に反していた」かなと思います。

 

>学会発表だから研究途中で質が低いのも普通のような

私もそう思います。今回の件の原因の一つではあると思いますが、全責任があるとは思いません。

 

flowermaze さん

>小説を全コピして分析に使っているので著作権法47条の7「情報解析研究のための複製等」に相当するかどうかの話でしょうし、この条項の成立経緯を考えると「引用」の範囲を超えている気がしますが、いかがでしょうか。 

今回の問題の根幹は「小説を"全コピして"使った」点ではなく、筆者の望まない情報(本文一部抜粋や著者名、URLなど)を意図しない形で公開した、という点ですから、全コピという研究上の手法は、「そもそも2次創作自体違法じゃね?」と同じくらい関係ない話だと私は思います。仮に今回の研究が情報解析ではなく文芸評論とか社会調査とかで、著者名や作品URL、文中の一文が抜き出されてただけだったとしても「全文じゃないからOKだね!」とはならないでしょう。

一応分析すると、ご指摘の通り著作権法47条の7「情報解析研究のための複製等」に適った形で解析されているかという点で、適っていればOK、適っていなければNG、場合によっては(たとえば著者が訴えるとか)まずい立場になります。ただ、現実的にはこの程度のミスで訴えられるとかそういうことはあまりないでしょう。「下手だったね、今後はちゃんとしてね」くらいのお咎めくらいじゃないでしょうか(そしてたぶん今回の筆者たちはその程度のお咎めは既に受けていると思います。ドキュメント非公開にされてるし)。

また、全文コピーは引用の範疇を超えているおそれがあります。なので ①情報解析は情報解析のルールにのっとって行った ②特に言及に値する部分は原文からの引用を行った と2つのやり方でドキュメントを作成しているのではないでしょうか(非公開のため確認できませんが)。

①だけだと著者のペンネームやURLを個別に記する必要はないと考えられますが、②ではそれが不可欠です。そして今回の問題の論点はその②に付随する出典元表記で作者名やURL、そして引用による本文一部抜粋にあります。だから引用が議論の的になっているのです。

 

 

 □過去の記事

ishijimaeiwa.hatenablog.jp

*1:ただ、pixivR18小説の上位10作品のうち8作品がBLものだったということはこの手法ではわからないので、数少ない成果と言えるかもしれません。