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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

「引用」について。

hrnabi.com

 

DeNAのWELQ問題に端を発するここのところのキュレーションメディアどうよ問題について、一つ気になっていることがあります。それは、ライターもメディア側も批判側も「引用」についてどれだけ正しく理解しているのか? ということです。

引用についてイチから説明するのは大変…と思っていたら、上記の記事が非常に正確に説明してくれていました。

詳細については上記サイトをご覧いただくとして、箇条書きで要約すると、

 

・文章や写真の転載・使用・二次利用などの「他所から持ってきて使う」という意味の言葉と「引用」は、意味が全然違う

・引用は著作権法に定められている権利で、特定のやり方と目的であれば、誰でも人の文章や写真を無償・無断で使用できる

・どこからどこまでが引用の範囲なのかについてはあいまいな部分がありケースバイケース。法の精神に鑑みて、個別に判断すべき

・各種SNSには著作権法とは別にそれぞれガイドラインがあり、たとえばTwitterであればRT、またはAPIを使った埋め込みであれば「引用」同様、無償・無断で使用できる(それ以外の方法、例えばキャプチャして貼るなどはガイドライン違反)

 

おおよそこんな感じです。

なので、引用について理解している人にとっては、今回の件は「元々ちゃんとした記事を書いていればよかったのでは…?」というだけの話なのです。

 

ただ、メディア側は正しく引用できる程度の人を集めて記事を書かせるコストを支払いたくないため、クラウドソーシングを介して1文字1円以下の人たちに著作権違反をさせていたらしく、それがまずいのです。

ライターには資格がないので難しいところですが、例えるなら「調理師免許持ってない人に、それが危険と分かっていながら安い賃金で食べ物を作らせていた」という感じです。

普通に考えれば、採用基準に「著作権法に基づいた引用ができる人」と入れるか、採用後にレクチャーをすればいいだけの話なのですが、いろんな記事を読む限り、人が集まりにくくなるだけでなく、検証する手間も必要になるので、そのコストすら惜しかったのでしょう。

 

採用側、編集者側に著作権法の正しい理解がなかったというセンもありますが、さすがに考えにくいと思います。大卒程度のスタッフが数名いれば、引用についての知識が皆無ということはないはずです。

 

(ただ、下記の記事など読むと、ライターも指示を出していた編集者も分かってなかったのかも? とも思います。分かっててやっていたのかもしれませんが)

withnews.jp

 

なぜ「大卒程度なら」と言えるかというと、ライターとか編集者とか専門家とか関係なく、大学生が卒論を書くには引用についての知識が不可欠だからです。

論文は先行研究を引用してナンボなので、引用しかたを知らないとまともな卒論は書けません。なので、学士(=大卒)なら、引用し方は大体知っているはずなのです*1

もちろん一部学部には卒論が必要ない場合もありますが、大卒が5人もいれば卒論を書いたことがある人は一人くらいはいるでしょう。

 

というわけで、もし今回の件で多くのライターや編集者に引用についての知識が乏しかったのだとしたら、これは大学教育のレベル低下問題の一つのあらわれだな、と思う次第です。

分かっててやっていたのだとしても、それが法律違反、グレーではなくブラックだという学がなかったのでしょう。

 

 

やっぱり教育は国の要ですね(←結論)。

 

 

最後に、引用に関する実体験を一つ紹介して終わりにしたいと思います。

以前、家族が本を出すことになり、その中で某Y新聞の記事の一部を使いたい、と相談されたので「引用し方はこれこれこうなので、この通りやれば誰かに許諾を得る必要はないですよ」とレクチャーをしました。

ところが家族は律儀にY新聞社に問い合わせをし、その返事として「使うなら使用料を払ってください、いついつまでに連絡をください」と結構な額の価格表が送られてきた、とのことでした。

私はフザケンナと思ったのですが、一応法学者である父にこの件を話したところ「もし利用してもいいですか? と聞いたのなら、会社の資産の利用にお金を請求するのは当然。引用してもいいですか? なら、請求はできない」とのことでした。そりゃそうだ。

で、家族に確認したところ、どうやら利用と伝えていたようなんです。

なので次は私が窓口になり「検討の結果、今回は引用することにしました。ご対応ありがとうございました」と伝えたところ「著作権法上の引用であれば自由に使っていただいて問題ありません」との回答で、一件落着しました。

 

Y新聞社も知ってて大枚はたかせようとしていたのですから、結構なもんです。

法律は弱い者の味方ではなく、知ってる者の味方だと言いますが、ほんとそれだな、と思った一件でした。

 

 

(おわり)

 

 

自分が学生の時はこんな本を読んだ気がします。 

デジタル時代の著作権 (ちくま新書)

デジタル時代の著作権 (ちくま新書)

 
18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

 

 

  

*1:ただ、よく思い出してみると、私も大学の授業やゼミで引用の仕方について手取り足取り習った記憶はありません。自分で本でも読んだんでしょう