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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

2016年12月6日開催「『アニメNEXT100 』キックオフシンポジウム アニメのつくる未来」参加メモ・前編

コラム アニメ 情報

anime100.jp

 

 秋葉原UDXで開催のアニメ系のカンファレンス「『アニメNEXT100 』キックオフシンポジウム  アニメのつくる未来」(http://anime100.jp/conference.html)に参加してきました。

  面白く学びの多いイベントだったので、メモした部分や個人的に印象深かった部分を中心に、箇条書きにて書き残しておきたいと思います*1

 

※ご注意※

・セミナー全体をまとめたレポートではなく、印象に残った部分のみの覚書です。

・発言の順番も一部前後しています。

カギカッコ内の記述も発言そのものではなく、私のメモや記憶によるものです。口調や言い回しなども実際のものとは異なります。

・むしろ「ここはこうだったよ」というのがあればどんどんご指摘ください。 

 

 以上、予めご了承ください。

 

□イベント概要

『アニメNEXT100 』キックオフシンポジウム
アニメのつくる未来 開催決定・参加者募集

100年後、アニメは世界をどう変えるのか・100年後、アニメは未来をどう創るのか?
2017年1月、日本で国産ア二メーションが公開されてから満100年を迎えます。
私達、一般社団法人日本動画協会は、この100年目を契機に、次なる未来へ向かって日本のアニメーションが発展し続けることを目指し、『アニメNEXT100』プロジェクトを立ち上げます。 言葉を超えたコミュニケーションを実現してきたアニメーション。その源泉である人の想像力がつくりだす「―アニメのつくる未来―」を、アニメーション業界で 活躍するクリエイター、映像・先端技術やユニークな思考を形に変え続ける方々の視点を通じて考察し、『アニメのつくる未来の一つのカタチ』について仮説を立てることを試みます。同時に、日本のアニメーション文化とパワーを国内外に高密なインパクトを持って発信、更にインバウンドへ結びつけることを目指します。日本のアニメーションの可能性と課題を様々なジャンルで活動される多くの皆様とともに共有しながら、前進し、未来を創造し続けることを目指す。その第一弾として、キックオフシンポジウムを開催し参加者を募集いたします。

日 時:
2016年12月6日(火)12:00開場/13:00開始
場 所:
秋葉原UDX6Fカンファレンス
(東京都千代田区外神田4-14-1秋葉原UDX
[MAP]

概要

■開会のご挨拶・プロジェクトへの期待 (13:00-13:20)

石川 和子
一般社団法人日本動画協会理事長:『ア二メNEXT100』プロジェクト代表

■100周年プロジェクト『日本のアニメ大全』(13:20-13:50)

とちぎあきら氏
東京国立近代美術館フィルムセンター 主任研究員
吉田 力雄
一般社団法人日本動画協会副理事長 日本のアニメ大全プロジェクトリーダー
大徳 哲雄氏
株式会社 樹想社 代表取締役立教大学文学部 文芸思想専修講師
木村 智哉氏
明治学院大学 非常勤講師
檜山 大悟
一般社団法人日本動画協会データベース・アーカイブ委員

■第1部: 『アニメーション教育・人材育成・発掘』(14:00-16:00)

※パネリスト

清水 慎治氏
東映アニメーション株式会社 常務取締役・プロデューサー)
大地丙太郎
(アニメ監督・演出家・撮影監督)
高橋 良輔氏
(アニメ監督・脚本家・演出家・プロデューサー)
山村 浩二氏
東京藝術大学大学院映像研究科教授・アニメーション作家)

※ファシリテータ

植田 益朗
(日本動画協会理事・アニメーション教育・人材育成・発掘プロジェクトリーダー)

■第2部: 『アニメの未来~アニメの可能性~』(16:20-18:20)

※パネリスト

齋藤 精一氏
(株式会社ライゾマティクス 代表)
SUGIZO
LUNA SEAX JAPANJUNO REACTOR
高野 明彦氏
国立情報学研究所教授)
中川 悠介氏
アソビシステム株式会社 代表取締役
浜野 京氏
内閣府 政策参与(クールジャパン戦略担当))
福井 健策氏
骨董通り法律事務所 弁護士)

※ファシリテータ

宮河 恭夫
(株式会社サンライズ代表取締役・アニメNEXT100統括プロデューサー)

■シンポジウム総括・『アニメNEXT100 2017』宣言 (18:20-18:50)

 

■開会のあいさつ

・驚きだったのは司会が冨永みーなさんだったこと。豪華!(←パトレイバー世代)。

 

■第1部:『アニメーション教育・人材育成・発掘』

高橋良輔監督、思い入れの深い作品として『鉄腕アトム』(1963)の第119話「空とぶレンズ」を挙げ「見た目は子供向けでも大人が引き込まれるようなシリアスな作品が作れるんだ、と感じた。尊敬する先輩(師匠、だったかも)の杉井ギサブローさん*2がやった回です」「アトムは全話数の半分以上が原作にないオリジナル作品で、子供向けの作品を作ったことない人が作ってた」

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大地丙太郎監督、思い入れの深い作品として『わんぱく王子の大蛇退治』『わんわん忠臣蔵』に並んで、自作の『ゆめ太カンパニー*3を挙げSHIROBAKOの15年くらい前にアニメ制作進行のアニメを作ってたんですよ!」と笑いを誘う。

→この後、アニメ産業の労働問題の話につながります。

→一部上映もされましたが普通に面白かったです。『こどものおもちゃ』のノリで『SHIROBAKO』みたいな感じかな…不勉強ながら未見だったので買おうと思います。

→買いました。

 

■アニメ業界の労働環境問題 

・高橋監督「虫プロ時代、仕事してるとスタジオに手塚先生がやってきて『作品できてる?』とおっしゃる。仕事の話を返すと『違う、君自身の新しい作品だよ!』と。実際周りの先輩も仕事以外に自分の作品を作っていたので自分も作ってみた。また手塚先生が表れて『作品作ってる?』今度は『作ってます』と答えて作品を見せると、その時の自分の給料の5倍にあたる15万円をスッと出して『これ、役に立つから』と言ってくれた。今思うと、新しい表現に挑戦するチャンスを上の人がくれていた」

→手塚先生、アニメーターのパトロンをしてたんだ! お金の面だけでなく、オリジナル作品制作を推奨する空気感があったことなど、クリエイティブにいい環境を手塚先生が意識的に用意していたことが分かりました。

また、高橋監督の当時の給料である3万円がどのくらいの価値だったのかを調べてみました。

上記のエピソードが何年のことかは定かではないですが、高橋監督が虫プロに在籍していたのは1964年~1972年とのことですので、監督が大卒と同じ年齢だった1965年と仮定します。

www.777money.com

その年の大卒の平均初任給は上記サイトによると24,102円です。

findtheedge.blog.fc2.com

こちらのサイトによると、大卒公務員の初任給は平均19,610円とのことなので、そのほぼ1.5倍にあたる3万円はかなりいい待遇だったようです(加えて、当時は現在より大学進学率も低く、大卒の価値も今より高かったはずです)。

さらにその5倍の金額となると、今の物価に照らすと150万円はくだらない価値があったと思われます。そんなお金を若者にポケットマネーでポンとくれてたんだ…

・同年代の大卒公務員の1.5倍、一般企業勤めよりもいい給料をもらえる

・仕事以外に自分の作品を作っていい

・新しい表現を求められている

・漫画の大先生の元で働ける

・自分の作品を作ったらポンと支援金をもらえる

こういう環境を先人が用意してくれていたというのは、本当に恵まれた環境だったんだなあと思います。

もし今、上記と同じ環境があったら、絵が描きたい人、脚本をやりたい人、映像に憧れる人、かなりの数がTVアニメスタジオに行くでしょう。

初期のTVアニメ業界の人材が豊かだった理由の一つは確実にここにあるし、今このくらいの視座で環境を整えないといけない、といういい目安になると思います。

あと少し文脈からそれますが、当時の手塚先生としてはTVアニメは新しい表現の一つという認識でやってたんだ、というのも再確認しました。

手塚治虫 実験アニメーション作品集 [DVD]

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・高橋監督 「アニメで一番大事なのは絵だと思うけど、その絵描きの初任給が5万円というのでは、入り口に問題がある。これをどうにかしないと」

 

・大地監督「最近つらいと感じる現場が(2つほど)あった。何故だろうと考えてみると、以前はクリエイティブに集中する自分をプロデューサーの方が守ってくれてたが、最近それがないように感じる」

・高橋監督「昔はプロデューサーが作品のすべて、各スタッフの気質まで知っててくれてたけど、今そこまで見てくれてないんじゃないかな」「そこまで見てくれるプロデューサーは東映アニメーションさんくらいにしかいなかったかも」

→これは10年以上前からずっと言われている、アニメプロデューサーに関する問題。これに絡む話はこの後も出てきますが、クリエイターの立場の方からこの話が出たのは新鮮でした。

 

■アニメ教育と"多様性"の話 

ファシリテーターの植田氏から、子供へのアニメーション教育について、各人へ意見を求められました。

・清水氏(若者向けのアニメ教育の在り方について)「アニメ制作の能力を身につけるには、教育ではなく現場で学ぶのが一番。今年『君の名は。』が大ヒットしましたが、作品がヒットして商業的にも大きな成果を出せば、自然とそれに憧れて人はやってくる

→「儲かるところに人は集まる」という主旨は上記の労働問題(儲かるか否か)に絡めているようで、映画の商業的ヒットが(会社にとっては間違いなく成功であっても)クリエイターの収入につながるとは限らないので、経営者っぽい発言だなと感じました。

 

・山村監督(若者向けのアニメ教育について)「教育は目標をもってはダメ。常に"楽しいからやる"でないといけない」「創作は自由。メディアごとの倫理があって表現できる範囲はそれぞれ違うけど、その倫理を守っている分には自由であるべき。」

・(アニメ教育の在り方について)「アニメは創作の一部なので、いろいろやる中でアニメについても学べる環境を作るべき」

→確かに、今後デジタルツールが発展していくにしたがって、漫画とアニメと実写映像の境目はあいまいになっていくはずですから、アニメ「だけ」 の教育というのは少し狭いかもしれませんね。

 

・大地監督(アニメ教育の在り方について)「以前、(高橋)良輔さんに『君は常識と非常識を両方もってるね』と言われてすごく嬉しかった」「学ぶことは真似ることと言いますが『これ絶対に真似てやる!』という気持ちと『絶対に真似てやるもんか!』という気持ち、両方持ってやってる」「そのためには自分なりの考え方が必要ですが、人の嗜好は14歳までに決まるというので、14歳までにいろんな作品をとにかく見て、自分なりの意見を持つのがいいと思う」

 

・大地監督「アニメがデジタル化する前はフィルムが完成したら試写をやっていた。別のスタジオの人も含めてみんなで見るから胃が痛かったんだけど、意見交換ができてよかった」

→この環境はアニメ制作のデジタル化に伴ってなくなっている(もしくは機会が減っている)のだそうです。これもクリエイターが多様な意見を取り入れる機会だったようです。

 

・高橋監督「京アニの萌え系の作品を見た時、感動した。アニメといえばバトルとかロボットとかだと思ってたけど、可愛い女の子の日常で物語を作れるなんて新しい表現だと感じた。最近は見たことのあるような作品が増えているけど、新しいジャンルを(私も)開拓していきたい」

ボトムズの高橋監督が萌え系を!? と思いましたが、少し調べると下記のような記事が出てきました(当時見たはずなんだけど失念していました)。こちらのレポートでも同様のことをおっしゃっていて、京アニの作品や山田監督をかなり高く評価されていました。

los-endos.hatenablog.com

 

・山村監督(労働環境問題に絡めて)「多様性が重要。そのためには生活のベースがないと」

 

 

 というわけで、このセッションでは「アニメ産業のの入り口(労働環境)問題」「教育やクリエイティブにおける多様性の重要性」の二点が印象に残りました。

 『アニメーション教育・人材育成・発掘』というセッションだったわけですが、これからアニメ業界に来る人、今いる人のために何をどうすべきか? の確認&再確認ができたように思います。

 

 ■その他印象に残った話

・大地監督「監督は演出と思ってる」

・大地監督「最近かわいい制作進行の女の子が多い! くろみちゃんの時は希望を込めてキャラを作ったけど、最近は本当にいるんだよな」

・高橋監督「大地君みたいにコンテが上手い人ならいいけど、僕はそうじゃない。そうなると監督に必要な能力はスケジュール管理だと思う。」「本来シナリオチェックはプロデューサーの仕事なんだけど、最近それができない。それで監督がやることになるんだけど、監督も8割くらいはシナリオが読めない。するとコンテでどうにかしようとして、そこでスケジュールに無理が生じる。この段階でスケジュールに無理が出ると、その後の工程(作画とか撮影とか)全部に影響が出る。スケジュールが管理できていれば他の人に頼むなどどうにでもなる」

→個人的に、監督は8割シナリオが読めない、というのは初耳で驚きでした。また、シナリオチェックは本来プロデューサーの仕事、というのも。

 

■100周年プロジェクト『日本のアニメ大全』(本当は上記セッションの前にありました)

・アニメのデータベースを作ったり、歴史を調べたりするプロジェクトについての発表。データベースは構築中のもののデモンストレーションがありました。これまで本邦にて公開された商業・アートアニメ作品100年分をデータベース化するというものですが、これが完成すればアニメ研究もしやすくなるし*4、キャラクタービジネスをする際も版権管理窓口にアクセスしやすくなるので、何かと役に立つという。その通りだと思うのでがんばってほしい。

・アニメの歴史調査については「本邦初の国産アニメ作品は何か?」の研究経過発表がありました。少し前までは下川凹天(しもかわおうてん/しもかわへこてん)の『芋川椋三玄関番の巻』という1917年1月に公開されたとされる作品が最初と言われていましたが、当時の資料に誤表記も多くフィルムも現存していないため議論が続いていました。今回の調査で当時の映画雑誌の1917年1月の作品欄下川凹天に関する記載があり、作品タイトルまでは特定できなかったものの、どうやら第一号の制作者は彼で間違いなさそうだ、ということが分かったとのことでした。

 

第2部も非常に興味深かったので、別途まとめたいと思います。

*1:生中継をしていたので、家に帰ってそのログを見れば正確なことは分かるからメモは適当でいいや、と思っていたのですが、生中継のログは公開されていませんでした。。。残念

*2:アトム当時は杉井儀三郎名義。

*3:正式なタイトルは『アニメーション制作進行 くろみちゃん』のようですが、監督はこのタイトルで表現されていました。

*4:ほんの数十年前のTVアニメでも詳細なことが分からないということはザラにある。