LM314V21

アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

鳥山明『DRAGON BALL』(18〜34)、集英社、1984

 前回は第23回天下一武道会ラディッツ辺りまで読んだので、今回はいわゆる「Z」らへんを読んできました。リアルタイムでは人造人間かセルの辺りで抜けちゃったクチだったので、アニメやうわさである程度聞いていたとはいえ、魔人ブウ編とかはほとんど初読っぽかったです。で、以下感想。

 以前ここで私は主人公を好きになることが多いと書きましたが、この漫画でも悟空の印象が一番強かったです。当時はピッコロが好きだったしキャラ的にベジータがおいしいというのもよく分かるのですが、やっぱり悟空ですね。文句なしにかっこいいです。
 何がかっこいいかというと「バカだけど強くて優しい」というキャラ付けとしてはあまりに王道な人物設定が、全然問題なく魅力的に機能しているところです。
 悟空はバカだけど、頭カラッポなだけで短絡的だったり何かとキレたりはしない。すごく冷静に物事考えてるし、よっぽどのことがないとキレたりしない。ヒーローとして当たり前なんだけど、これが新鮮でした。
 引き合いに出して悪いんだけど『ONE PIECE』のルフィは自分の仲間をどうにかされたらキレるって印象が強くて、悟空と設定だけは似ているんだけど何か違う感じがします。ルフィは仲間のためならだれかれ構わず怒りに任せて殴る人って印象です。もちろん仲間思いなのはいいことなんだけど、反面人間が小さいという気もしちゃいます。一方悟空は確かにクリリンを殺されて怒りで超サイヤ人になるわけだけど、「罪もない人をたくさん殺しやがって」とか「ここなら人も動物もいねえ」(戦う場所を探していた際)とか、仲間だけに囚われない人間のデカさをさりげなく示すシーンが多かった気がします。ベジータが悟空をして優しいから甘くてダメと何度も批判しているのに、全然改善(というか改悪?)しないという辺りにも、「バカさ」に一本筋が通ってる感じがします。
 結果、自分の好きなことにしか興味がないバカなのにちゃんと理性的で人間がデカいという、誰でも一度は憧れるヒーローとして成立していると感じました。


 また、思いっきり強いのも単純に魅力的でした。フリーザ戦もブウ戦も、経過はすごく苦戦するんだけど最後は圧勝という構成になっていて、それが爽快でした。悟空は割と多弁で、余裕のあるセリフがかっこよかったりもしました。超サイヤ人になった悟空を見て慄くフリーザとの

「貴様、何者だ!?」
とっくにごぞんじなんだろ? オレは地球から貴様を倒すためにやってきたサイヤ人…穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士…超サイヤ人孫悟空だ!!!!!!」

 という掛け合いとか、それまでの流れもあって最高にキマってました*1。地球を愛する自分の誇りと、ベジータからもらったサイヤ人の誇りに裏付けられた名セリフですね。


 そして一番よかったのが、底抜けに優しいところです。すごく憎いはずのベジータフリーザにも勝った後には情けをかける辺り、後のベジータ共々お前がナンバーワンだって言いたくなります。個人的に特によかったのが、悪い方のブウを倒してる最中ですら「お前よくがんばったよ。たった一人で…」って感心してるところでした。弱いものいじめが嫌いな悟空のものを見る目にハッとさせられました。最後のボスをみんなで協力して倒すのは当たり前のことなんだけど、悟空の優しさは悪に虐げられていた人々だけでなく、その反面常に一人で戦ってるボスにまで向けられているわけですね。悟空のケタ違いの強さと優しさに胸を打たれました。



 そういうわけでやっとDBを最後まで読み終えたわけですが、多くのジャンプ漫画が目指して到達できないものがここにあるんだな、というのが読んでみてようやく実感できました。確かに悟空を超えるヒーローを生むのは相当難しそうです。
 他にもバトルのかっこよさや鳥山流の息の抜け具合、ドラゴンボールを最後のオチに見事に絡ませていることとか、いろいろ書きたいことはあるのですが、あまり長くなってしまってもアレなので悟空の話題に絞って書いてみました。他にもいいところがたくさんあるいい漫画だと思いました。当時は「フリーザ戦以降はトランクスの存在以外、不要」という立場でしたが、今回は最後まで楽しめたので再読してよかったです。

*1:冷静に考えると「編集の人が考えたセリフなんだろうなあ」とか思っちゃうわけですが。