『DRAGON BALL』はスーパー現役大ヒットコンテンツです(重要)。
最近気になる記事が流れてきたので久しぶりにブログを書こうと思います。
要約すると「会社の先輩がドラゴンボール読め読めうるせーから読んでみたけど、昔の名作って感じで当時斬新とされたであろう絵や話も今となってはありきたりで、正直それほど面白くなかった」ということでした。
LIGの記事は面白さ優先で中身重視ってわけではないので突っ込むのも野暮な気もしますが(逆にITやライティングに関心がありこういう軽いノリの読み物が好きな方には他の記事もオススメです)、自分の意見をまとめるためにも以下書いていきます。
大前提として、読め読め言うだけで肝心の面白さのプレゼンテーションができていない先輩の失敗があるし、「反論するために読む」というスタンスで読んでしまったという筆者の態度は残念だなーと思います。
一方、筆者には「反論するために読んだけどそれを跳ね返すくらい面白かった!」と感じられなかった、というのもまた事実でしょう。
私は『DRAGON BALL』は作家性の強い哲学的な作品だし、更新の作品に与えた影響は計り知れない一方、他の漫画には見られないような個性的な作品だと理解しているので、筆者はまだコンテンツを見る目が幼いように感じます(『DRAGON BALL』は幼稚だと侮られやすい作品ではあるのですが)。
また、筆者のツッコミどころは粗が多いようにも感じました。犬が国王である世界観が現実世界に近いというのは「?」だし、鳥山明先生はコメントでは毎度チャランポランである風を装ってるけど、ファンならご存知の通り設定や描写を作り込むタイプです。
この辺りの細かいツッコミはやり始めるときりがないので割愛し、今回は「時代背景」の項目のみについて触れたいと思います。
インターネットがまだ普及していなかった1980年代後半の余暇の過ごし方は、スマホで当たり前のようにゲームができる今ほどに選択肢が多くなかったのではないかと思うのです。
果たして1992年に生まれ21世紀を生きてきた私にとって、これらの「よかった点」は通じるのでしょうか。
ドラゴンボールから多大な影響を受け、さらに改良を加えてきた作品を読んでいる私にとって、ドラゴンボールは「よくある絵」であり「どこかで読んだことのある物語」に感じてしまったのです。
おおよそこの辺りの話です。これ、本当にそうでしょうか??
以下の記事をご覧ください。2018年5月9日の記事です。
グループ全体のIP別売上高では『ドラゴンボール』が前の期比60.2%増の979億円と1000億円達成が間近に迫ったことを明らかにした。同社のIP別売上高でも圧倒的な首位となっていることがわかる。
ドラゴンボールシリーズって今無茶苦茶ヒットしてるコンテンツなんです。売上高の表も見てみましょう。
2017年の時点で昨年実績から1.5倍になり、ガンダムシリーズを抜いて売上実績1000億に届こうという状態なんですね。よく見るとガンダム、ワンピース、スーパー戦隊などが微減する中、大躍進している急成長コンテンツがドラゴンボールなんです。
2018年の全体では800億とやや下がる計画ですが、それでもグループ全体のコンテンツの中でナンバーワンです。
この大躍進について、記事では下記のように分析しています。
国内トイホビーでは14.5%増の124億円にとどまっていることから、ゲームなどの売上が寄与したものとみられる。スマートフォンゲーム『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』が世界的に人気を博しているほか、家庭用ゲームソフト『「DRAGON BALL FighterZ(ドラゴンボールファイターズ)』が発売となった。
という風に、おもちゃやハイターゲット向けの商品であるフィギュアなどよりはゲームが売れているのでは、という分析です。
ここには書かれていませんが、低年齢向けアーケードゲームの『ドラゴンボールヒーローズ』シリーズもよくTVCMで見かけますから、おそらく売上の後押しをしていると思われます。
「いやいや、筆者は漫画の話をしてるんだからゲームの売上の話を持ち出されても」という考え方もあるでしょう。では漫画の方はどうでしょうか?
原作コミックがこれまで無茶苦茶売れたことは周知のことだと思います。以下のサイトによると発行部数1億5700万部で歴代4位だそうです。
ただ、これだと今売れている数字は分からないので、他の記事を調べてみました。Vジャンプに好評連載中の『ドラゴンボール超(スーパー)』に関する、2016年5月9日のこんな記事です。
4月4日に発売された漫画版『ドラゴンボール超』の単行本第1巻は、4月4日の発売後、予想を上回る人気で発売後すぐに品薄状態となってしまいました。しかし5月6日頃からは重版分が全国の書店に並び始めております。こちらもすぐに品薄状態になってしまうかもしれませんが、まだ手に入れられていない方は、ぜひお近くの書店で探してみてください。
漫画『ドラゴンボール超』は鳥山明先生がストーリー原案を務める同名アニメをコミカライズしたもので、とよたろう氏によって執筆されています。実際の売上は分かりませんが、まあまあいい感じで売れているようです。
で、このアニメ版については下記のような記事が見つかりました。2017年2月15日の記事で、先の売上高のデータの少し過去のものに触れています。
重要なのはここ。
「ドラゴンボール」はここ数年で急激に売り上げを伸ばしている。2014年から見ると、
●「ドラゴンボール」
2014年期:114億、2015年期:194億、2016年期:349億、2017年期:500億見込み
「ドラゴンボール」のアニメは、2009年~11年と14年~15年にかけて「ドラゴンボールZ」(89年~96年)を再編集した「ドラゴンボール改」が放送され、15年から完全新作アニメ「ドラゴンボール超」の放送が始まった。近年の売り上げ上昇は、新作アニメが関係していると推測されている。
過去作を比較的原作に近い形で再編集した『ドラゴンボール改』で足場を固め、新作ストーリーであるアニメ『ドラゴンボール超』が始まってから躍進が始まっている、と見ていいでしょう。
ちなみにアニメがスタートする前、2005年から2008年頃のデータについて調べている方がいたのでこちらもご紹介します。
ドラゴンボールに着目すると
2005年実績:60億
2006年実績:79億
2007年実績:55億
2008年見込:180億
となっています。2008年以外はトントンといった感じですね。
いきなり売上3倍になっている2008年に何があったのかを見てみると、ゲームではPS2用ソフト『ドラゴンボールZ インフィニットワールド』、PS3用ソフト『ドラゴンボールZ バーストリミット』、DS用ソフト『ドラゴンボールDS』が発売されています。
ただゲーム版の発売はこの年の前にも同じくらいのペースで発売されているので、ヒットの大きな要因とは言えなさそうです。
アニメでは、鳥山明先生がシナリオ監修したイベント用新作オリジナルアニメ『ドラゴンボール オッス!帰ってきた孫悟空と仲間たち!!』が公開されています。鳥山先生がアニメ版に積極的に関わり、その後の『神と神』『超』などのアニメシリーズのスタートとなった作品です。実際サクッと見られて面白いのでオススメです。
2008年から2014年の間のデータがちょっと見つからなかったのですが、2008年が180億、2014年が114億だったことを考えると、『改』の時期はトントンまたは微減傾向だったのかもしれません。
その間に『DRAGONBALL EVOLUTION』や『ドラゴンボールZ 神と神』などがあったことを考えても、『超』のアニメとコミックの相乗効果が始まった2015年以降躍進が始まったと考えてよさそうです。
以上の振り返りをまとめると、
・鳥山明先生自らストーリー監修した新作アニメのヒットをベースに、
・コミカライズ版が(掲載書籍の対象年齢から察するに)子供層に売れ、
・ソシャゲ(ミドルティーン以上)やアーケードゲーム(児童向け)のヒットに繋がって今大ヒットを飛ばしている
・のが、ドラゴンボール。
と言えるでしょう。
と、ここまで分かったとおり、ドラゴンボールシリーズのアニメや漫画、ゲームは今、子供大人問わず無茶苦茶にヒットしているわけです。
もちろんこれらは漫画の『DRAGON BALL』だけの効果ではありませんが、原作の物語やキャラクターが魅力的でなければここまでのヒットはありえませんし、新作で描かれている物語やキャラクターが原作より殊更に優れているとか、ゲーム版が原作抜きにして面白すぎるという話も聞かないので、やはり原作の魅力の延長にあるのが今の大ヒットであると考えるべきでしょう。
また、鳥山明先生がストーリー監修している新作アニメ以降ヒットが続いていることを考えれば、彼の作家性にヒットの要因を探ることもできそうです。
というわけで、LIGの栄藤八さんには、先輩に反論するためなどというしょうもない理由ではなく、今この瞬間、継続的なファンだけでなく連載時期には生まれてもいなかった子供も巻き込み、現行の漫画や数多ある新作コンテンツを抑え込んで大ヒットしている魅力ってなんなんだろう? という観点で『DRAGON BALL』をまた読んでいただけたらなあと思います。
そこには「今の漫画はもっと物語が洗練されている」「今の漫画はもっと絵が綺麗だ」「当時は『Dr.SLUMP』がヒットした直後だったからでは」といったような時代性に関係ない、シンプルかつ奥深い魅力があるはずです。
あと、栄藤八さんの先輩は後輩に対するプレゼンが下手すぎるので、プレゼン練習をした方がいいと思いました。
(おわりです)
DRAGON BALL モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/10/12
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