026『シン・ゴジラ』(2016)よかったところと不満点。 ※20160808追記
今週のお題「映画の夏」
話題の『シン・ゴジラ』観てきました。話題作だけあって面白かったですが、不満点も。☆☆☆☆
以下ネタバレ注意。
まずよかったところ。
・映像がすごい! 最初の這いつくばったゴジラ以外は、実写かCGかミニチュアか分からない映像ばかりでした。あとこれも序盤の、ボートが川にどんどん打ち上げられるところとか、ゴジラの最初の襲撃で崩壊した町とか、すごい映像でした。邦画=チャチいCGという認識が覆されました。
・安い! 製作費たった15億とのこと。死ぬほど金かけて作った映像なんだろうなあと思ってました。全然そんなことなかった。上記2点はこの作品だけでなく邦画のスタンダードにしてほしい(よくばり)。
(参考)
・少し前にも書きましたが、映画館に映画を見に行く良さって「豪華なお祭り感」にあると思っているので、そういう意味で映像豪華・画面中にモブや小物いっぱいですごくお金がかかってそうな雰囲気満載の『シン・ゴジラ』は正しく"映画"だったし、満足度も高かったです。
・いわゆる人間ドラマ的なものがほぼないけど、個人的にはスッキリしててよかったと思う(庵野監督にそれを求めるのもどうかと思う)。この人たちにもバックグラウンドがいろいろあるんだろうな、と垣間見えるくらいでちょうどよかったです。
・過去シリーズのBGMがじゃんじゃん流れるのは、シリーズを知っている身としては面白かったです。怪獣大戦争マーチとかテンション上がる(個人的にはファミコン版のゴジラで慣れ親しんだクチだけど)。
・無人新幹線爆弾と無人在来線爆弾はもちろん私的にもGOODでした。電車が戦う画によって「全日本VSゴジラ」ってのが明確になったと思う(自分でも意外だったけど、電車ってすごい「日本」って感じがしました)。でもせっかくだから事前に用意したJR職員のガンバリや「こういう風に使うのは本来不本意ですが…」みたいなシーンもちょろっと入れて、全日本感を盛り上げてほしかったな(製薬会社職員ががんばってたというのはあったので)。ディレクターズカットではぜひ。
次に不満点。
・ラストが消化不良。え、これで終わり? と思いました。ヤシオリってヤマタノオロチを倒した時に眠らせた酒とのことだけど、だったらヤマタノオロチ同様倒せよ、と思いました。
・テーマ的には「災厄を退けるのではなく、災厄と共に生きる」ってのが日本的なのは分からないでもないし、東北の原発のイメージもあるんだろうけど、テーマより爽快感をとってほしかった。
・作中「この国」って言いすぎ。「日本」「本邦」「我が国」とかでもいいじゃん。制作にあたって政治家の方に取材をしたそうだけど、官僚のみなさんって本当にこういう言い方をするの??
・石原さとみのルー語が耳障りだった。外国人としても意識高い女性としてもディフォルメされすぎでどうにも。てっきり序盤で踏みつぶされて死ぬような端役かと思ったら主要キャラだし。
・新しいBGMは庵野監督の音楽のセンスが好きではないのでイマイチでした。ゴスペルっぽいのも苦手だし、最後に露骨に「終わります!」みたいな感じの曲が流れたのもうーん、でした。
・一番の不満点は、初代ゴジラに比べて科学的に発展的なビジョンがなかったこと。これは下に詳しく書きます。
初代『ゴジラ』って、原爆の化身であるゴジラを、それ以上の兵器であるオキシジェンデストロイヤーで葬るのはどうよ? って話になるわけだけど、これはオキシジェンデストロイヤーをゴジラ=原水爆以上の悪としながらも「科学技術は発展する」ということは肯定しており、少なくとも科学技術については右肩上がりな未来ビジョンを提示しているわけです。
一方、シン・ゴジラではこの構図が米国の核攻撃VSゴジラ=核となっており、平衡した関係になっています。そして登場人物たちは「アメリカの核攻撃だけはやめて」といった感じで最後の戦いに赴くのですが、これだとアメリカの核>ゴジラとなってしまっています(このことそのものもやや「?」という感じでした)。
厳密には、ゴジラには無限の進化の可能性が示唆されているので平衡ではなくややゴジラの方が上ではあるのですが、それは科学というよりはどちらかというとファンタジー的なニュアンスだったように感じられましたし、私が気になったのはそういう設定的なバランスの問題ではありません。
私ががっかりしたのは、SF大好きの庵野監督ですら科学技術の右肩上がりの発展的な画を提示できなかった、というよりそんなビジョンを持ち合わせていなかった、ということです。
広島長崎に落とされた原爆や海洋投棄された放射性物質はもちろん、東京・東北・熊本・大分の震災だって2016年現在からすれば過去ないし現在の話。シン・ゴジラって全部現在より前の話なんです。キュウ・ゴジラのオキシジェンデストロイヤーはうそっぱちだけど未来の話。
別に軌道エレベーターでもナノマシンでもはやぶさでもペンシル爆弾(ゼットン倒したやつ)でもなんでもいいんだけど、何かSF的科学技術的なものをゴジラとぶつけて、人類の進化は恐ろしいとかなんとか言いながら、科学礼賛してほしかったなあ。
庵野監督でさえそれができないほど、夢がない時代になってしまったのか…無人在来線爆弾もカッコイイんだけど、ね…
※20160808追記 新兵器? が全く登場していないわけではなかったようです。
オキシジェンデストロイヤーのような新兵器ではなく、新しい街そのものをそのポジションに持ってきたという点にメッセージ性がある、と考えると素晴らしいような…「いやそうじゃねえよ!」というような…
というわけで、ものすごく個人的なところでがっかりしましたが、他についてはすごくいい"映画"だったと思います。とにかく映像は凄いのでいろんな人に見てほしいし、今後の邦画は全部「15億でジン・ゴジラ並み」を基準にしてほしいです。
人間ドラマとかテーマ性があるから、とか言い訳にせず、とにかく15億かけたらこれ。
みんな約束だぜ!!

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