024『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)TV版見てないのに映画だけ見た感想。

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2015年の話題作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」と同系列でタメを張る怪物映画が日本のアニメから出てきたと聞いて、TV版もOVA版もちゃんと見ていないのに映画だけ見てきました。
以下、映画を見た人向けのネタバレ感想です。
☆☆☆
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比較で言えばマッドマックスにはちょい劣るけど、映画としては十分魅力のある作品でした。
まず、続き物の最新作なのに映画だけ見ても大丈夫か? に関しては、ほぼ大丈夫でした。映画が始まる前に「3分ちょっとで分かるガールズ&パンツァー」というミニコーナーがあったので、設定やどういう話だったのかもだいたい分かった状態で映画が始まりました。唯一説明不足だったのは、主人公たちの学校が学園艦という巨大な船の上にあるというところくらいだと思う。
で、映画そのものについて。
先にイマイチだと感じたところから。
- 戦車に乗っている登場人物が上半身を晒したまま試合(戦車戦)を行っているところ。特に冒頭「戦車道の試合では実弾を使います」という説明をしながら顔を出していたので「危ないじゃん! 練習用のダミー弾にしとけよ!」と思い、その後もこの子たち怪我しないのかハラハラしながら見ていました。次第に、ナメック星が消滅しても残る悟空のズボンみたいなアニメ的お約束だということが分かり、映画の最後らへんになったら納得して見るようになっていたのですが、やっぱり最初は面食らいました。同じお約束でも「この世界には戦車道という嗜みがあります」というような概念的なものではなく、目に見えるものだと飲み込むのに時間がかかるなあと実感しました。
- 物語の展開で急なポイントがいくつかある。これも派手な戦車戦を見せるための便宜的な流れみたいなものだから突っ込むのも野暮なのかもしれないけど、特に以下の2点は気になった。
- いきなり「やっぱり廃校です。1回優勝したくらいではまぐれかもしれませんし」と言われるところ。それだけじゃなくて、実は冒頭の練習戦が実は文科省の調査になっており「今回の模擬試合でやっぱり負けましたよね? 全国優勝は実力不相応のまぐれだったと言われても仕方ないのでは? それとも大洗の戦車道は、賭けるものがあるかないかで手を抜いたりするようなものなのですか??」とか言って詰められたりすると、話の流れもよく納得感もちょっと上がったかも。
- 主人公らの元にこれまでのライバルたちが集うシーンも、ちょっとはフォローというかそこに至る過程のようなものを匂わせてほしかった。事前に生徒会長が各校に打診していたような描写があれば納得感ももうちょっとあったと思います(あったのかな? 見落としてるだけかも)。個人的には、大洗女子学園の他の一般の生徒たちが同校戦車道チームが勝てば廃校撤回というのを聞いてどっかのライバルチームにお願いに行き、制服を貸して転校手続きも手伝ってくれた、その熱さにうたれたライバルチームが他のライバルチームにも打診し、みんな集まった、みたいな話が少し語られたりすると最高だったと思う。だって、戦車道チームだけが大洗女子学園じゃないはずじゃん? そういう、主人公たちのちょっと周りのこととかがあまり描かれていないのが、マッドマックスに比べてチョイ劣ると感じたところでした。
イマイチなところはこれくらいで、以下よかったところ。
- 戦車の発する音がいい! 個人的に戦車アニメと言えば「機動警察パトレイバー2 the Movie」だったんだけど、これはムック本にもあった通り、もし本当に戦車が街中に出てきたら、こんなうるささじゃねえぞ、という音の点がイマイチなところでした。本作は事前にネットで「音がいい」と聞いてそこに期待して見に行ったのですが、それくらい事前のハードルが高くても、冒頭の交戦シーンで「うるせえ! ひょっとしてずっとこの調子で映画やるんじゃないだろうな?」ってくらいうるさくて大満足でした。なお、冒頭だけ派手な音にして本編はそれなりなボリュームに下げてくるのかと思ったら、本当に全編冒頭と同じ、シーンによってはそれ以上のボリュームでした。この点に関してはかなりの満足感です((装甲への着弾音なんかはもっとバリエーションがあってもよかったかな!(欲望は尽きない)))。
- 大学チームとの試合直前に、これまで戦ってきたのであろうライバルチームが次々参戦するシーン、熱くてうるっときました。TVシリーズを見てたらもっと熱くなれたんだろうな! 見てないから本当のところはわからないけど、これまで対抗チームとして確執や衝突や、そこからの信頼や友情とかがあったんだろうなあと勝手に想像して熱くなりました。あと、キャラのセリフや映像よりも、各チームをイメージする各国のマーチが次々メドレーで流れる伴奏曲がかなり効果的でした。正直、この曲にうるっときてた。更に上記のようなバックグラウンドの話があれば本当に泣いてたかも。
- 知波単学園の面々が最終的に成長してよかった。冒頭の試合では知波単学園の面々があまりにステレオタイプ的な突撃バカすぎて「何だこの映画知能指数低いな、賢いのは主人公だけって世界観か?」って感じで存在そのものにイライラしたのですが、物語のセオリー通り、最後の方は成長して立ち回りを覚えて活躍してくれたので、結果的に愛らしい連中になりました。主人公たちはTVシリーズでそのあたりの成長ストーリを終えているだろうから、その分の映画版での役割を担っていたのかもしれませんね。賢い女学生たちが戦うだけの映画でもそれはそれでつまらないですしね。
- みんな戦車道精神があるところも、見ていて爽やかでよかった。敵の悪口を言わない、負けてもグチグチしない、(敵も含めて)ズルはしない*1。普通こういうスポーツものみたいな話って、スポーツマンシップを汚す敵とかが出てきて、それを主人公たちが正々堂々戦って破ったりするんだと思うんだけど、この作品ではそもそもそういうやつが敵にも味方にも出てこない。すごく日本的で平和でいいと思います。戦車同士の最終対決の最中にくまのゴーカート? が紛れ込んじゃって互いに一瞬隙ができるのも、なんか優しくていいなと思った。
という感じでした。映画の骨子である戦車戦そのものは個人的には必要十分って感じで、期待値を下回ることはなかったけど、それ以上に大満足ってわけでもなし(音以外)。音は最高なので、総合的な満足度は高いです。
上述の通りですが、マッドマックスみたいにトンデモアクションの裏になる、背景的な人間・ストーリー描写にもうちょっと細かなディティールがあれば、もうちょいお気に入りの作品になったと思います。
…なんかこうやって書くと冷たいレビューだけど、実際見てる最中は目が潤むような映画だったから、全然オススメです。TVシリーズから追っかけてる人であればキャラたちにもっと愛着があるはずなので、もっともっと楽しめるはずです。見ない手はないでしょう。でもTVシリーズ見てなくても余裕でオススメできるくらいには面白かったです。
あと、映画館ですごい音を聞きたい人にはマジオススメです。家で再現するのは難しいと思うので、ぜひ映画館で見てみてください。
*1:それだけに、冒頭の試合で一瞬大洗を応援しているらしいモブが「殺せー」って言ってるように聞こえたのがちょっと気にかかった。選手じゃないからギリセーフかな。