023『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)見た人の感想を聞きたくなる映画でした。

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すごく久しぶりに映画レビューです。2015年の(今のところ)最大の話題作、マッドマックスを見てきました。
以下ネタバレです。
☆☆☆
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まずはよくなかった点から。
これは単に、私がすごいすごいと聞きすぎてから見に行ってしまったことです。変に期待値がでかすぎました…
あと「想像よりも全然グロくないよ!」いうことで割と無防備な感じで見に行ったんだけど、それはあくまでR-15作品としてはということで、グロではない残酷描写だけでも抵抗のある私としてはちょっと身構えるようなシーンや展開が多かったです。
また、カーチェイスやアクションに関しては、もう派手な映像を見飽きてしまっているのか、すごい映像ではあるんだけどそんなにはびっくりも感動もしなかったです(3Dで見ればまた違った感想かもしれない)。特に序盤は「荒野を爆走するこの車、いつトランスフォームするんだろう…なかなか見せ場来ないなあ…」と思いながら見ている感じでした(スタントアクション的なところは普通にすごいと思ったし面白かったです)。
で、それ以外は特に問題はなく、普通に楽しめました。
バイオレンスがダメで、カーアクションがダメでだと、マッドマックスのどこを普通に楽しんだんだ? と言われてしまいそうですが、これは意外にも、人物の見せ方や人物同士の掛け合いの見せ方、ストーリー運び、世界設定など、派手な映像を支えるディティールの方に感心したところが多かったです(もちろん、アクションもすごいのですが)。
まず主人公のマックス。「マッドマックス」ってタイトルだから狂った獣のような乱暴者かと期待していたし物語冒頭はそんな感じですが、見終わった感想で言えば「過去のトラウマに苛まれる、口下手だけど思慮のある男性」といった感じで、割と共感できるタイプの人物でした。間接的に彼のせいで仲間が死んでしまったり、逆に抱えている深刻なトラウマのおかげで一命をとりとめたりするなど、単純に良し悪しでは割り切れない因縁めいた境遇の描写にも、何か感じ入るものがあります。言葉少ななのも、ダンディでハードボイルドというよりは、話し下手でそうとしかコミュニケーションできないガキっぽい不器用な感じなんだけど、だからこそ物語のターニングポイントで、ジェスチャーや表情を交えながらフュリオサを一生懸命説得するシーンは、ああこいつ真心で最善だと思う選択を説明しようとしてるんだろうな、と伝わり、逆にかっこよかったです。
ラスボスのイモータン・ジョーが冒頭でヨボヨボの体にプロテクターをまとってから民衆の前に立つところで「ああ、弱いところを隠さないと支配が成立しないから、こいつも一生懸命なんだろうな」と思わせたり、最初は真っ白ボディとスキンヘッドでキモい印象しかなかったウォーボーイズやニュークスが、仲間同士のやり取りやヒロインたちとの関係で「こいつらも不幸な境遇のただの青年なんだな」と思えるキャラクターに描写されていたりなど、敵役等もディティールがあって面白かったです。また、敵同士味方同士の言葉の掛け合い方も、それほどしめっぽく見せつけることなくキャラに深みを与えていて好印象でした。とにかくアクションメインで言葉はそれほど出てこないので、逆に限りあるセリフにはちゃんと意味を持たせているし、言葉以外の仕草や小物や境遇にも、キャラクターの生い立ちを思わせる仕掛けがしてあって、いい意味で重厚に感じました。
また、ストーリーは直線的で分かりやすく、主人公サイドと敵サイドとそれ以外の関係するグループなどいろいろ出てくる割には人物やグループ間の関係性がわかりやすいので、ストーリーを追いやすく集中が切れにくいのもよかったです。車はほぼ全部砂塵まみれで色とか分からないんだけど、フォルムでだいたいどのグループの所属かわかるようになっているし、グループが同盟を組む際にはボス同士がちゃんと物理的に一つの場所に集まったり仲良さげに会話したりしてくれるので「ああ、今こいつらが同盟を組んで攻めてくるんだな」というのも、だいたい初見で分かりました。
冷静に考え直すと、個人のマックス、イモータン・ジョーのグループ、そこを抜けだしたフュリオサ達のグループ、ハリネズミみたいな車のグループ、峠を守るグループ、人食い男爵のグループ、武器将軍のグループ、緑の大地のグループ…と、結構複雑な人間関係があるのですが、なんとなく見ててもそれが分かるように工夫されているのは見事だと思います。
あと誰かが感想で書いていましたが、登場人物ほぼ全員が知能低そうな割には、アクションやバトルでその瞬間その瞬間最善手を選んでいるので、アクション映画にありがちな「あーこいつなんでこういうことしちゃうんだバカバカ」というストレスがない、というのもすごく頷けます。変なもたつきがないからバカではなく生存本能に従って戦う野生のしなやかさのようなものを感じるし、「本能が生きろ(サバイブ)と言っている」という冒頭の独白が置き物になっていなくていいです。テーマがぶれてない。また、悩んだりモタモタしたりしないから、映像やアクションが畳みかけるように進んでいくのも爽快感があってグッドです。
あと、これも見ていない人にとっては意外だと思うけど、割とフェミニンなテーマの映画だと思います。男性に管理された女性の独立を描いている、と言ってしまえば少々チャチというかありきたりなんだけど、片腕の女隊長フュリオサと子供を産むためだけに奴隷にされている女性たちの独立の過程にある損失や挫折、克服がストーリーのメインになっている映画ではあります(主人公のマックスは行きがかり上そのお手伝いをするという役回り)。その女性たちの描き方も単純にかっこいい、幸せになれてよかったね、という感じでもない、けど偽悪的でもないところのバランスが絶妙だと思います。この監督、マッチョな思考の人ではないんだろうな、と思いましたが、ここはいしじまえいわとしてもぜひ女性の感想を聞きたいところです。
というわけで、派手なアクションと分かりやすいメッセージを伝えるために、ディティールをちゃんと作りこんだ、映画らしい作品だったと思います。いしじまえいわ的には他の人の感想を聞いてみたくなる作品だったので、もし見たよって方がいらっしゃいましたらぜひご一報ください。語り合いましょう。

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