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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

自作を語る「動く心」

 この話は岡山県立岡山操山高等学校文学部発行の季刊誌「すみれの花とぶたの鼻」第75号にに掲載されたものです。何歳の頃のものだろう…17歳か18歳だったと思います。


 私はそれまで恋愛ものとかそういうものをほとんど書いたことがなかったのですが、ギャグもファンタジーものも書いてしまったのでそろそろ逃げては通れないだろう、ということでチャレンジしてみたのがこの話です。ただ、モロに恋愛ものというよりはややロマンチック? かな? くらいのテイストになっています(ここでは便宜的に恋愛もの、としときます)。照れがあったんでしょう。今でもありますが…
 一方、まだ書いていないジャンルとして童話というのも残っていました。私の中で「童話」はかなり敷居の高い世界だったので自分がそれをちゃんと書ききれるとは思っていなかったし(今でも思っていません)、残念ながらそれほど「書きたい」と惹きつけられるジャンルでもありませんでした。ですから単独で書くにはいろんな意味で不備があったので、せっかくだから書かねばならない他のジャンル(=恋愛もの)と統合してしまおう…ということでこのような形になりました。
 ですからこの話のコンセプトは「恋愛もの+童話」であり、ある意味では前半と後半(+冒頭)とを分けて読むことができるダブルなお話と言えます。その場合カギカッコ内の童話部分はメタ物語となります。しかし書くモチベーション的にも物語のメッセージ的にも、比重が重いのは恋愛ものの方であることは一目瞭然ですね。私にとっては童話<恋愛ものであったことが窺えます。なんだ、恋愛もの書きたかったんじゃん。


 ですが、読んでいただけると分かるとおり、いわるゆ恋愛ものとはちょっと違った感じにはなっていると思います。色っぽい会話があるわけでもないし悲恋という感じでもないし、具体的に恋愛もの的なアクション(キスとかハグとか)があるわけでもありません。強いて言えば満天の星空の下での男女の会話、という辺りがロマンチックかな? という程度だと思います。
 でもこの会話からアースとミーナの関係の深さが窺い知ることが出来るようになっていたら、この話は成功かな? と思います。当時の私にとって理想的な恋愛ものの形はこんな感じだったんでしょうね。青臭いですね。
 上で「関係の深さ」と書きましたが、この男女の関係がラストでよくなっているのか悪くなっているのか、については当時から一貫して「よくなっている」と思っています。一見バッドエンドのようですが、無口系美少女(というべきか)のミーナが自分の過去や考えについて自ら述べることができているのですから、アースは一度落ち込むものの、二人の仲はその後一層強いものになったんじゃないか…というのが作者の考えです。ませた男女観を持った高校生だったんです。


 あと、最後のアースみたいに女の子との関係で頭を抱えた経験のない人はほとんどいないんじゃないかと私は思います。そういう意味では男性に共感してもらえる恋愛ものになってるんじゃないかな? と自負しております。
 また、昔ある女性に「(アースが)テントの外でも中でも寝てくれるところが優しいと思う」と感想いただいたこともあります。女性の方にもぐっときてもらえてたら嬉しいですね。


 この話は総じてコンセプトがうまくいった印象があるので、このシリーズの中では個人的に一番のお気に入りです。「ファンタジア」というシリーズ自体でやりたかったことも、この話でかなりうまく達成できているんじゃないでしょうか。まあ、今となってはこんな人間関係を描いたラノベはありふれていると思いますが…




 次回は正真正銘の恋愛もの「ムシデン(わかれ)」の解説をしたいと思います。