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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

「true tears」(2008)を見終わりました(3分の3枚目)発動編。

true tears Blu-ray Box

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 最終話の第13話「君の涙を」(特別版)まで見終わりました。これにて完結! 以下、印象が鮮明なうちに感想を書いていきたいと思います。


 まず見終わった感想としては、乃絵さんかわいそうの一言に尽きます(KONAMI感)。
 客観的に見れば、ひと冬の恋が終わったところでいろんなものを失ったことと自分の幼さを実感して涙を知った、トゥルーティアーズ・完! ということで納得ですが、それにしても乃絵はなんも悪いことしてないどころか一番まともでいい子なのに、なぜ…というもにょもにょした感じが残ります。まあ、何も残らない話よりはずっといいですが…
 キモいお兄さんと年相応に不器用な主人公によって半ば強制的に親友(になり得たし少なくとも自分はそう思っていた)と初恋をさせられて、浮ついた気持ちにさせられた挙句、比呂美さんと自分の判断とでそれを終えざるを得なかった、誠実で可哀想な子だなあ…という印象です。
 あと、この子は前半で勘がいい子だという描写がありながら、後半では「自分は何も知らなかった、そのことによって周りの人たちを傷つけてた」とかなり自省的なところも好感が持てます。その点主人公とお兄さんはあまりにガキだし、比呂美さんは自己利益獲得のため覚悟完了しているので、普通に言えば本当に劇中で一番いい子だと思います。
 最後の涙も、単に初恋が終わったという悲しみの涙ではないんじゃないかな。勝手に想像するに、あの最後の涙は、自分のイノセントキャラ設定が自分の周りへの配慮と周りの自分への接し方を抑制していたことを客観的に顧みて、さあこれから普通の女の子に成長するぞ、という過程の痛みと、これまでのいろんなものとの決別の涙なんじゃなかろうか。そう考えると、誰のための涙というよりは、自分が愛するすべての人のために流した涙というか…あれ、乃絵さん天使じゃね??
 まあ、とにかくこの子がいい子でないとこのアニメは「ガキの恋愛を見せられて、で? っていう」なだけのアニメになってしまうので、名実ともに乃絵さんはヒロインというか女主人公だったと思います。変な初恋はしっかり乗り越えて、素敵なレディに成長してほしい気持ちでいっぱいです。
 あ、だからこそですが、最終話に急に他の女子生徒と仲良くなるんじゃなくて、その過程もそれ以前にほんの少しでいいので描いてほしかったです。


 で、強キャラの比呂美さん。こっちも自分が嫌な子であることに自覚的なところはいいと思います。というか、言ってることややってることは結構普通に嫌な子のそれだったなあ。まあリアルではある。
 「彼女は私です」発言以外にも、思い返してみれば序盤で乃絵さんをビッチ呼ばわりしたりとか、「昔のことは忘れた」「4番(キモイ兄さん)が好き」等の嘘(というか強がり)を言ったりとか、彼女がいる主人公にチューかましたりとか、結構汚いというかずるいジャブやブローを全編通じてバシバシ決めてるわけですが、その割には個人的にそんなに嫌いではないです。
 これは、Vガンダムシャクティみたいに「自分にとって主人公が至上価値でその他のあらゆる物事は二の次以下にしか思ってません、周りの評価と違って自分は完璧超人ではないし、そういう周り(=自分が大事だと思っている人以外のすべての人)の期待に応える気もありません」という彼女のスタンスがいっそ清々しいからかなあと思います。大事な思い出に根差した二人の関係にしか興味がない、本能に生きる獣なのです。また、キモイお兄さんを利用したり(バイク壊しても特に謝らない)最後の最後で特に理由もなく「ヤダ」と拗ねてみたり、天邪鬼なところも、80年代ヒロインみたいで悪くないです。
 ずっと居候先の坊ちゃんで気を遣い続けてた相手である主人公に対して、最後に分かりやすく「ヤダ」とわがままを言えたのは、よかったね、と思いました。同時に、そのわがままを見通してわざわざ真に受けなくなった主人公も成長したなあ、と。比呂美さんは完璧超人ではなく拗ねて嘘や反対のことを言ったりする子だ、クールビューティーではなく陰性のツンデレでしたわということが主人公にもようやっと分かったようで、やっと釣り合う二人になってよかったなと思います。比呂美さんには末永く陰気で自分勝手な陰性ツンデレでいてほしいですまる(※私は比呂美さんのキャラクターが割と大好きです)
 なお、私は最後に急に「ヤダ」と言ったのは、乃絵さんとの関係を清算してきたので告りました、みたいな手短な展開がなんか気に入らなかったから、程度のしょうもない理由だと思います。ナイスだと思います。


 主人公の眞一郎君は、まあ等身大の若者ですね。自分の気持ちで周りを振り回して自分もぶん回って…でも最後に乃絵さんをぶった切る決断をちゃんとしたのは偉いと思います。仕方ないよね。全員を幸せにはできないもんね。恋愛ってそういうもんだよね。
 一方、割とそれだけの人物だったなあ、というのは残念なところです。13話しかないとはいえ、家族との問題である実家を継ぐのか自分のやりたいことを貫くのか問題とか、父へのコンプレックス、母との確執をどのように超克する(またはした)のか、とか、そういったドラマが特に発展せず、恋愛模様の決着と共になし崩し的に終了したため、単なる青春恋愛ものの主人公です! という以上のキャラにはならなかった気がします。もうちょっと人物としての深みがほしかった…
 今後は、比呂美さんと末永く暮らしてくれたらなあと思います。比呂美さんのために。


 愛子さん&三代吉君は、やっぱり最後まで要るのかこれ? という感じでした。乃絵さん、比呂美さん、主人公の3人トライアングルでいいじゃん。
 愛子様はもうちょっとがんばって主人公に一矢報いて成長のきっかけになってほしかったなあ。別の主人公のこと好きでなくていいので、主人公の横で三代吉君とくっついたり離れたりして、主人公に「ああ、みんな真面目に頑張ってるんだ」と思わせるだけのキャラと関係でよかったと思う。たとえるなら、とらドラ! の生徒会長と北村君みたいな感じ? あれも主人公にとっては完全に関係のない話だけど、竜児(とらドラの主人公)と大河(同ヒロイン)に生き様はちゃんと見せつけて成長を促してはいたとは思います。そういう感じ。
 三代吉君は、呪い関係で少しだけ乃絵さんとの絡みがあったので、そこがもう少し何かあれば恋愛模様の一角として意味が出たと思う。惜しい。そうでなければ、谷口ポジション(どうでもいいムードメーカー)か、上記の通り北村君ポジションでよかったと思う。


 キモいお兄さんは、彼がどうして乃絵さんラブすぎるのかのドラマをきちんと見せてくれなかったので、ただの困った人でした。実妹に恋する理由なんて描けば描くだけキモいとは思うけど、軽くでもいいのでそこは何か見せてくれないとお兄さんに一切肩入れできないので…
 あと、彼にも、比呂美さんとの関係を通じて成長する過程があればなあと思いました。途中、そういうのが有りそうな気もしたんだが、特にありませんでした。
 一方、実は比呂美さんにとっては(形式上)初彼氏に散々わがままを言うことで、本命彼氏に甘えることができるようになったという成長のステップになっていたように感じました。キモ兄さんと付き合ってる時の比呂美さんはマジで身勝手なので、そういった関係を挟まないと、最後まで主人公に正直に甘えたりできなかったんじゃないかな。肝心のキモ兄さん自身は比呂美との関係で成長や変化をしたように見えなかったのは本当に残念でした。これがあれば青春群像ものの登場人物として成立してたと思うんだけど…
 途中、主人公と比呂美さんがニアミスになった兄妹の許されざる関係みたいな要素をマジで持ってる人なので、そこにドラマがほしかったし、逆に言えば主人公たちの兄妹疑惑が特に対比されなかったのも「この展開、要るか?」って気がしました。


 主人公のお母さんとお父さん、比呂美さんのお母さんの三角関係と、主人公と比呂美さんとの兄妹疑惑も、なんか消化不良でした。お母さんがあらぬ嘘をついていた、ということになってしまいましたが、そこは普通「ただの疑惑で、そういう事実はありませんでした」であるべきで、それならなんで疑惑が浮上することになったのか、お父さんと比呂美さんのお母さんとの間に何があったのか? はちゃんとドラマに組み込んでほしかったです。お母さんによる出まかせの嘘でした、ってのはあんまりで、もしそれだけなら比呂美さんのキャラクター設定に影を落とすには軽すぎるし、比呂美さんはお母さんを刺し殺してもいいと思う(まあ、比呂美さん的には主人公と禁断の関係じゃなくなったのでお母さんへの憎しみとかどうでもよくなったのだと思いますが)。
 愛子様関連のエピソードは削っていいので、その代りにここはちゃんとしてほしかったです。


 最後に、個人的にひと時も目を離すことなくその動向に注視していた酒蔵の少年には、特になんもありませんでした。これ、無関係なモブのおっさんとかじゃダメなのか? なんか目もキラキラしてて無邪気だし、主人公たちと同い年くらいのようだし、比呂美さんと境遇が似てるし、絶対に何かあると思ったんだけど…実は比呂美さんのアニムスで、比呂美さんが終盤精神世界に旅立ち概念化した時にその正体が明らかになって比呂美さん帰還の糸口に…とか、まあ別に面白い展開でもないのでそんなのはいいんだけど、それなら紛らわしいキャラ配置にしないでほしかったです。ただでさえ短いんだからさ…


 という感じでした。
 総じて丁寧な作りだし、乃絵さんと眞一郎君が主人公、比呂美さんがヒロイン、3者の青春恋愛物語としては好感の持てるお話でした。地味なのも個人的にはグッドですし。困ったちゃんタイフーン1号2号であるお兄さんと比呂美さん、それにガキである主人公に巻き込まれて、人間的に成長して涙を取り戻すことになった乃絵さんのひと冬の物語と思えば、涙なしに見られません。
 一方、短い割にはいろんな要素が無駄だったり中途半端だったりで、勿体ない印象も強く残りました。このあたりを整理してもっと濃度を上げれば、もっとわかりやすく愛されるキャラクターたちになったように思います。惜しい。でも地味な青春恋愛ものとしての完成度は水準以上ではあると思うので、お気に入りの1作になりました。


 余談ですが、ここから地味さを捨てて全体的に派手に分かりやすくし、キャラ毎の関係を整理しなおしたのが、半年後放映になる「とらドラ!」なのかなあ、と思いました。で、その先には「あのはな」もあるわけで、そうするとシリーズ構成の岡田麿里さんの特徴が垣間見えてくる気がします。
 3作に共通しているのですが、終盤の怒涛の展開(登場人物の心情の吐露とか関係の変化とか)を、モノローグに頼る傾向があるのが気になります。「あのはな」最終回に顕著ですが、口に出して説明しすぎです。もうちょっと我慢して、人物の表情や映像で見せてほしいです。乃絵さんの最後の涙とかも、いちいち見せなくても、同じ場所で指先から血の涙流してたので、乃絵さんがあの場所に立ってエンディングに入るだけで伝わるんじゃないかなあ。
 ただ、上記3作の中では本作がまだ一番抑制のきいた演出になっていることを考えると、より派手に分かりやすく見せていく傾向のとらドラやあのはなの演出の方が、ヒット作としては正解なのかもしれません。個人的には、本作くらいかもうちょっと抑制するくらいでいいと思うのですが…
 ただ、最新作である「心が叫びたがってるんだ」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」等を見るに、注目の脚本家であることは間違いないので、今後も注視していこうと思いました。


true tears vol.7 [DVD]

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 最終巻のDVDは3,799円。うん、今ならBlu-Ray Box のスタンダード版を買うのがよさそうです。
 なお、当時はDVD各巻毎にミニキャラ4コマ劇場映像という特典があった模様ですが、かなり残念な作り(しょうもない小ネタ&数秒で終わる)だったので、当時DVDで集めていた方々の心中お察し申し上げます。その上、Boxにもちゃんと収録されているので、これから見る人は安心してBoxで見てください。


TVアニメ true tears ドラマCD

TVアニメ true tears ドラマCD

 本編の後日談で真の最終回と噂されるドラマCDですが、現在は完全版のCDBoxに収録されており、値段もそんなに変わらないため、CDBoxを買ってもいいような気もします。ストーリーが気になると言えば気になるので、聞いてみたい気もします。


とらドラ! Blu-ray BOX

とらドラ! Blu-ray BOX

 あのはな劇場版では、TV版最終回のあのしゃべり場合戦がカットされて名作になっているそうです。なぜ最初からそうしなかったのか。 オルフェンズの主人公は敵兵銃殺を厭わない、ヒイロや刹那以上のガチテロリストと聞いています。全然共感できない主人公設定なのですが、それだけに岡田さんによる今後の展開が期待されます。