「みくみくにしてあげる♪」とニコ動とクリエイティブとかの話。
- 出版社/メーカー: クリプトン・フューチャー・メディア
- 発売日: 2007/08/31
- メディア: CD-ROM
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ちゃんとした下調べもせずざっと書いた文章なのですが、テーマは『「みくみくにしてあげる♪」に見るニコ動と初音ミク』といったところです。
先のグーグルクロームのCMのおかげで「クリエイティブという視点から見る初音ミク」というテーマはかなりお馴染みのものになった…というか語りつくされていると思いますし、なんで今更「みくみくにしてあげる♪」なのか? という問題点もありますが(実際、下記の話は「みくみくにしてあげる♪」を軸にしなくても説明できる内容です)、まあまだ「初音ミクって何? 歌手なの? なんなの?」という人もどこかにはいるだろうし、初音ミクの代表曲と言えば私の中で未だにコレだと思っているので、まあいいかなとも思っています。
それではレッツゴー。
【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1097445
2007年09月20日にニコニコ動画上に公開されたのがこの「みくみくにしてあげる♪」という曲です。
個人的な記憶で言えば、初音ミクが出た直後はまだ「萌え系の声を自在に出させることができるソフトでエロいセリフをしゃべらせてみたぜ」等のしょうもないことに使われていたように覚えていますが、DTMソフト「初音ミク」の発売が2007年08月31日ということなので、実は発売からわずか21日でこういった曲が出てきたということでした。この曲は今でも初音ミクの代表曲として親しまれているようで、現在ニコニコ動画内での再生数は950万回になっています。ちなみにニコニコ動画内で「初音ミク」で検索して出てくる動画の中では、「初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」」の800万再生を抜いて未だに1位です(ちなみに3位は「初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「ワールドイズマイン」」でした)。
初音ミクは、作曲はできるけど歌えない、女性ボーカルの友達がいないというような隠れクリエイターたちに、作品を作って発表する方法を提供するソフトとして、すぐに大ヒットしました。wikipediaによると、4か月での目標販売数1000本だったところ、1年で4万本売れたそうです。
(参考)初音ミク - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/初音ミク
そういった形で初音ミクは、まずは作曲者、サウンドクリエイターのクリエイティビティを助けたわけですが、それ以外のクリエイターにも活躍の機会を与えることになりました。
みくみくにしてあげる♪を歌いたくて仕方なくなったので歌ってみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1316631
初音ミク feat. タイツォン - みくみくにしてあげる♪
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1506752
『みくみくにしてあげる』by歌和サクラ(大人ver/NEWアレンジ)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1625529
上記三つは、いずれも「みくみくにしてあげる♪」またはそれをアレンジした曲を素人の人が歌ったものになります。ニコニコ動画ではこのような「歌ってみた」と呼ばれるアマチュア歌手の動画が数多く上げられていますが、その中でも初音ミクのようなボカロ曲は人気があります。
何故かというと、曲そのものの人気もあるのですが、通常こういった曲をアップロードしているのを権利元に見つかってしまうと動画そのものが消されてしまうのに対し、初音ミクの開発元・クリプトン・フューチャー・メディア社には「営利目的でない作品の場合、ボーカロイドのビジュアルやそれを用いた曲に対して著作権を行使しない」という方針があるため、アップロードした「歌ってみた」動画が削除されることがない、というのが大きな要因の一つです。またそれに伴い、脱法行為をしないで済むという安心感も要因としてあると思います。
結果として、初音ミクは「歌うことのできなかった作曲者」と「歌ってみたいアマチュア歌手」をつなげ、さらにクリエイターの後押しをする形になりました。
クリプトン・フューチャー・メディア社がなぜそのような方針をとっているのか真意はわかりませんが、一般のミュージシャンの関連動画が所属事務所によって削除、非公開とされていく一方、ミク関連の動画は増えることはあっても減ることはないため、初音ミクの知名度・人気向上に大きく影響したと考えられます。個人的には、CGM 時代にふさわしい賢い方針だと思います。
【初音ミク】みくみくにしてあげる♪をヴァイオリンで演奏してみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15623135
みくみくにしてあげる♪をギッタギタにしてやったつもりだ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2349994
クラシックのプロが「演奏してみた」みくみくにしてあげる♪
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16611713
ボカロ曲は歌い手だけでなく、演奏者にも好評を博しています。一部プロの実名演奏もありますが、これらは彼らが自分の意思で勝手に演奏してアップロードしているものであり、おそらくノーギャラです。
このように、初音ミク界隈では「クリエイティブ=楽しむためのもの=無償=お金にこだわるのはきたない」というアマチュア精神がお約束になっています。この点に関しては、個人的には「美しいけど、クリエイティブの存続を考えると間違っているのでは?」と思わなくもないですが、少なくとも現状ではそうなっています。
余談ですが、そのため初音ミクやボーカロイド関連でひと儲け、というのは、相当慎重に、ファンやユーザーのアマチュアリズムを刺激しないようにやらないと、かなり痛い目を見ることになると思われます。
【小倉唯】「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」を踊ってみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7630464
ニコニコ動画では「踊ってみた」関連の動画も人気ジャンルなのですが、「みくみくにしてあげる」はアップテンポのノリのいい曲なので、踊り手の人々にも人気があったように思います。
ただ、ダンスに関してはアマチュアのものは見れたものではないものが多いので…いや、お上手なものもあるのですが、個人的にニコ動の"マスクを付けてダンス"というのがどうにも性に合わないので、今回はプロによる「踊ってみた」を紹介したいと思います。
上記のものはSEGA社のゲームソフト「初音ミク -Project DIVA-」で初音ミクの3DCGのモーションを担当し、その後アニメ「神様のメモ帳」の主人公・アリス役などで声優としても活躍する小倉唯さんによるダンスです。彼女のダンスモーションは上記ゲームソフトの他、ミクパというボーカロイド・キャラクターによるライブでの3DCG映像にも使われています(長くなるので、今回はミクパに関する説明はあえて省きます)。
また、先日のグーグル クロームのCMでも、上記の動画の映像が一瞬使われていたので(正確には上記動画を編集した動画が、更に編集されて使われていました)、見覚えがある方もいるかもしれません。
最後に、「みくみくにしてあげる」関連の映像作品をいくつか紹介したいと思います。
お前ら全員みっくみくにしてやるよ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2629116
これは「みくみくにしてあげる♪」のアレンジバージョンの曲(これもアマチュアによるアレンジ)をバックに、ニコニコ動画で人気のキャラクターたちとミクが何故か戦っている(しかも強い)という2Dアニメです。ストーリーも何もないですが、アニメーションの技術やアニメ的な演出力は非常に優れています。
3DみくみくPV♪
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1359820
これは3DCGによる「みくみくにしてあげる♪」のPVです。ソフトはライトウェーブという比較的安価な3DCGアニメーション制作ソフトを使っています。多分に漏れずこれもアマチュアによるもので、制作において商用目的があったり、お金が発生したりしていないもののようです。また、映像に関する賞などに出品したものでもないようです。
こういったクオリティの高い映像作品が商用とは別の方向から出てくるというのが、すごい世の中になったなあと実感させられます。更にすごいことに、この作品は2007年10月25日アップロードということで、この作品ですらもう5年前の作品なのです。
【初音ミク】「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」PV フルみっくver.【Project DIVA】
http://www.nicovideo.jp/watch/1247640396
これは上述の小倉唯さんがモーションを担当したゲームソフト「初音ミク -Project DIVA-」のPVで、もちろん商用作品になります。ちなみに「3DみくみくPV♪」の2年後、2009年7月アップロードの映像です。
DIVA発売時には既にアマチュアによるミクの3DCG映像作品がたくさん出ていたので「SEGAはゲームメーカーとしての威信を見せられるのか!?」というのが注目されたソフトだったように記憶しています。結果としてDIVAは人気ソフトとなり、その技術は後のミクパでの裸眼立体映像にも生かされ、SEGAはゲームメーカーとしての面目を見せつけたのでした。
【第3回MMD杯本選】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7931203
これは3DCGソフト「MikuMikuDance」(通称MMD)によって制作された作品です。2009年8月ということなので、DIVAの少し後ですね。
MMDは「初音ミクにもっとダンスを踊ってほしい」という一心で、樋口優氏という個人により開発・発表された3DCG映像制作ソフトで、現在でもフリーソフトとして誰でも無償でダウンロードすることが可能です。
(参考)VPVP
http://www.geocities.jp/higuchuu4/index.htm
このソフトではミクのモデルを変形・アレンジしたり、動きをつけたり、音声ファイルに合わせてリップシンクさせたりすることが可能な他、数多くの関連ツールやプラグインが公開されているので、現在はミクに限らず、ほぼ何でも作成してアニメーションさせることができるようになっています。またファイルサイズがZIPファイル展開後も約11MBと非常に小さく、動作が快適であることも特徴です。
このように非常に価値のあるソフトなのですが、現在でもフリーソフトのまま公開し続けており、開発者は「ミクの動画をたくさん見る」以外のメリットをほとんど享受していないため、"振り込み詐欺"にちなんで"振り込めない詐欺"と呼ばれることもあります。
現在、ニコニコ動画ではMMDを用いた3DCGコンテンツが数多くアップロードされています。MMD用の3DCGモデル(主にボーカロイドや人気のアニメキャラクター等)や、MMD の使い方に関する動画もいくつも上がっているので、その気になればソフト・プラグイン・モデルの入手→ソフトのオペレーションスキルの学習→公開までがニコニコ動画上でほぼ無償で完結できるようになっています。
一昔前だと、映像作品を作るためには実写にしてもアニメにしても初期投資のハードルが非常に高く、一定以上の品質の映像作品を素人が作るのはなかなか難しいものがありました。一方現在では、ボーカロイドやニコニコ動画を介してアマチュアによる商用レベルの作品が日夜アップロードされ人の耳目に触れ、評価を得ています。
以上、簡単ながら「みくみくにしてあげる♪」を中心とした、ボーカロイドやニコニコ動画に関するお話でした。いろんな人がいろんな方法で、初音ミクや「みくみくにしてあげる♪」やニコニコ動画を通じてクリエイティブを楽しんでおられるのが、読んでくださったみなさまに伝わりましたら幸いです。
個人的には、こういったアマチュアの活躍の場をうまく形成し、プロになる前のセミプロの登場を促すような仕組みが、どの表現ジャンルにもあるべきだと思っています。たとえば漫画の場合は、鉛筆と紙から始められるという意味で幸運にもそもそも敷居が低く、そういった「アマチュアの活躍の場」は既にあると言っていいですし、それが漫画というジャンルが上手くいっている秘訣のように思います(漫画という産業が上手くいっているかどうかは別の問題です)。
私の好きなアニメや特撮のジャンルも、3DCGの敷居が下がることによって、もっとたくさんの人が表現として楽しみ、結果としてプロになっていくという流れができれば、作品としても商業としても、もっと活性化するのは間違いありません。ですので、初音ミク-クリプトン式、ニコ動式のクリエイティブ推奨モデルをもっと多くの企業・団体が採用してくれたらと思って止みません。
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