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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

017『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー・侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦』(2009)

 正直、片方は最悪でした。
 ★
 私はアニメや特撮ヒーローもの番組が大好きだし、そういう一連の作品に軽い気持ちで「子供騙しだ。○○の方が…」なんて言う奴は、正直子供向け番組どころか人生の意味や価値なんてこれっぽっちも分かってない奴だ、と思っています。ですが、この仮面ライダー映画は言葉通り「子供騙し」以外の何物でもありませんでした。残念ながら。


 何が「子供騙し」かって、ストーリーが破綻している(むしろそんなもの存在しない)こと以上に、「子供なら仮面ライダーたくさん出れば喜ぶんだろ」「こうやりゃ喜ぶんだろ」というのが見え透いていること。ライダー同士が戦うライダートーナメント、ギャグ、新ヒーローの顔見せ、各ヒーローの勢ぞろい…などなど。


 あのね、子供の心を持った大人が子供の代弁させてもらいますとね、上に書いたようなことは確かに盛り上がるんだけど、それは最低限の演出があったらばこそなんですよ。


 トーナメントものは『DRAGONBALL』の天下一武道会や、『鉄腕アトム』の地上最大のロボット編なんかが王道だと思いますが、前者は物語上悟空の成長が表現されている場であり、後者は登場する新キャラクターたちが(バランスはまちまちですが)魅力的に描かれています。何の前触れもなく出てきたキャラクターが何の背景もなく勝ったり負けたりして、何が楽しいでしょう? 今回の映画前半はそんな感じ。RXの活躍が劇場で見れたのは嬉しいけど、まあそれだけ。


 ギャグに関しても背景が必要だと思います。後半に思い出したかのように敵幹部が下らない洒落を飛ばしますが、それまでのキャラ付けと全く矛盾していて、戸惑うばかりでした。劇場にはそこそこの数のお子さんがいましたが、笑い声一つあがりませんでした。これも「この程度のギャグやっとけば子供はゲラゲラ笑って満足するだろう」「昭和ライダーってこんなノリだろう」というような作り手側の意識の低さが伝わって薄ら寒い感じでした。


 新ヒーローの顔見せ映画と言えばなんと言っても『マジンガーZ対暗黒代将軍』に勝るものはないと思うのですが、この映画のスタッフは東映関係者でありながら『マジンガーZ〜』を見ていないのだろうということがよく分かりました。ヒーローのピンチに新ヒーローがやってきて圧倒的なパワーを見せ付けて去っていく…要素としては全く同じなのに、ピンチ描写も新ヒーローのパワー描写も全くもって甘い。劇とか出来レースにしか見えない。マジンガーくらいスクラップ寸前までやってくれないと、子供でも「ああ、またいつもの流れか」としか思わないよ(そういえば私個人は『超新星フラッシュマン』のロボット・フラッシュキングがやられたのが印象に残ってます。火花を散らしながら腕をもがれるフラッシュキングの姿に「ああ、これはもうダメかもしれない」と思ったものです)。
 それに、主人公と新キャラのつながりが全くなかったのもダメでした。監督以下、いったい何を考えていたのでしょう? 『マジンガーZ〜』では新ヒーロー・グレートマジンガーとのつながりをあらわすために半ば強引に甲児くん(主人公)の父親の話を持ってきていたりしててなんとも「今更かよ」というところもあるわけですが、その程度のドラマでも、無理にでも持ってくるのは話として最低限、というか礼儀のレベルだと思います。で、結構その程度の挿話で見ている人はうっかり盛り上がっちゃったりもするわけだし…


 ヒーロー勢ぞろいに関しても、何のバックグラウンドもない方々がチャンチャンバラバラされてもなあ…って感じです。
 これはストーリーの話になるんだけど、ディケイドは今回の映画で正義のための行いを何一つせず、むしろ大ショッカーの大首領だったわけです。そいつが内部抗争に敗れて組織に反逆するという流れの、どこに「自由の戦士・仮面ライダー」が揃って加勢する理由があるのでしょう? 「駆けつけたぞ!」とか言われても「なんで?」って思っちゃいます。子供騙しなら、せめてべったべたに正義を叫んだり子供助けたりすりゃいいのにそれすらなくて、ただ戦う理由は兄妹が高じた組織分裂。あんまりです。
 『仮面ライダーBLACK RX』の最終回間際に1〜10号ライダーが何の前触れもなく大集合したのには当時のファンから相当に批判が集まったそうですが、正義がどうとか平和がどうとかいう子供騙しのテーマすら放棄しているという点で今回のはそれよりもずっとひどいと思う。


 他にも「ガクトが何の前触れもなく出てきたけどすぐに消えてそれっきり」とか、まあいろいろひどいところはあるんだけど、言い出したらきりがないのでここまで。「お祭り映画だから小難しいことはナシで見るぜ!」という私のポジティブさを打破するのに余りある駄作でした。
 なお、シンケンジャーはTV版と同じ尺でありながら、せっかくの劇場版だからスケール感を出そうという一生懸命さが伝わって好印象でした。ワイヤーを使った殺陣も凝っていてかっこよかったです。海外では流行の3D立体映画に対応した作品なのに通常版を見てしまったので、今度また見に行こうかと思います。同時上映のライダーは…序盤のV3・スーパー1・BLACKの同時ジャンプ→キックがかっこよかったので、そこまで見て帰ります。