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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

自作を語る「誰も知らない悲しさ」

 記録によると、この話は岡山県立岡山操山高等学校文学部発行の季刊誌「すみれの花とぶたの鼻」77、78号に掲載されたものらしいです。私の記憶が正しければ、この時は部員からの原稿の集まりがよく、一冊の冊子に全ての原稿が掲載できなかったため、77号と78号を同時刊行することになった…のだと思います。それで私は、せっかく二冊に別れて出るのだから、と、一つの長い話ではなく、短い二つの話を載せようと思って二作品準備したのでした。その片方がこれであり、もう片方は「ます」という別の話になります。
 その二つの話のうち、こちらの話はどちらかというとシリーズ全体のストーリー(アースとミーナの話)に関連した話にしよう、というコンセプトだったのだと思います(もう片方は完全に読みきり型のさっぱりした話です)。「動く心」「告白」ときて、この話で二人の関係とその後がなんとなく暗示されるようになっています。
 元々二人の関係を「その後幸せに暮らしましたとさ」とか「これこれこういう経緯で復縁しました」とかいう風にはっきり描くつもりはなかったので、アースとミーナの関係はここで終了、となんとも尻切れな感じになっています。それはもうひとえに「きちんとした話を誤魔化さず最初から最後まで読むに堪えるレベルで書ききる」というできて当然できないとダメなことができないための、苦しい処置としか言いようがありません。それでも当時は「こういう裏を想像させる構成が本シリーズの持ち味なんじゃよね」などと思っていたわけですが…


 本作の単独の読み物としてのコンセプトは「男と別れ、仕事に疲れたOLが自宅に戻ってからすることってどんなことなんだろう? どんなことを考えるんだろう?」というものだったと記憶しています。18歳くらいのピチピチ高校生だったはずの当時の私は、なんでそんなことを書く対象に選んだんでしょう? 全くもって謎です。まあ、途方に暮れるOLの心情や状況なんて、当時の私にとっては剣と魔法以上にファンタジーみたいなものだったわけですから、「夢見る者たちの楽園ファンタジア」の題材にはうってつけだったようにも思います*1。今OLとして働かれている皆様…がいましたら、是非感想をお聞かせください。話を書いて約10年後に正解が聞けるわけで、なんとも嬉しいです。
 今回読み直してみたところ、思っていたよりも「一人で寝るシーン」以降のパートが多いように感じました。しかもその予想外に長かったパートはシリーズを意識したために描かれたと思われる内容になっており、単独の読み物としての構成に支障をきたしているように感じられます。つまり「つづく! って感じ」「これだけ読んでも全く面白くない」ということですね。残念…
 今思い返してみると、この頃になると作品のコンセプトや狙いをあまり友人(文学部で当時仲のよかった清水氏やoda氏)に話さずに書いていたように覚えています。シリーズも終盤であり自分の中では方針がはっきりしていたため助言を求めることをあまりしなかったのだと思いますが、今になって思えば、もっと人の意見を取り入れつつ考えながら書いたほうがよかったんじゃないかなあ、という感じです。この話に限らず、シリーズ初期のものと中期以降のもので若干雰囲気が異なるのは、そういう友人とのやり取りを積極的に作品に取り入れることをしなくなったためだと思います。初期のものに思い入れのある作者本人としては、実にもったいないなあ…と思われてなりません。せっかく文学部にいるんだから、仲間を大切にしましょう。一人で書くのは一人でできます。


 ちなみにタイトルの由来は、高山厳という方の「忘れません」という歌からきています*2。当時フォークソング好きだったため、その歌詞の一部をタイトルとして頂戴したわけです。主人公の家族構成とは設定上の齟齬がありますが、母を思う歌、という意味では作中にも影響が現れています。変に渋いチョイスですね。実際いい曲なので、皆さん機会があったら聞いてみてください。

*1:ああ、それにしてもなんて皮肉っぽいシリーズ名なんでしょう。ひねた高校生だったのですね…私。一時期は「恥ずかしいから」という理由で変更されたりもしたタイトルなのですが、今になって思うといろんなことを表現しちゃってるようにも思えます。

*2:参考:http://bohemians.exblog.jp/5309057/