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アニメや特撮やゲームやフィギュアの他、いしじまえいわの日記など関する気ままなブログです。

自作を語る「ムシデン(わかれ)」

 この話は操山高校文学部刊行の冊子「すみれの花とぶたの花」76号に掲載されたものです。たぶん高校2年生か3年生だったと思います。
 前回「動く心」でちょっとロマンチック? な話にチャレンジしたので、その次回作である本作はモロに恋愛ものをやっています。これは前回ので味をしめたから…ではなく、ヒーローとヒロインの深い絆を描いた後「…でもまあ実際この2人の間だけで人生の恋愛が完結するわけないよな、アニメじゃあるまいし」と思って別の恋愛を描いてみたくなったからなのでした。
 この頃のアニメやラノベにはヒーローとヒロインは分かちがたい関係にある、というような不文律があったように思います。まあ今も昔もそれは同じだとは思うのですが、例えば『エヴァ』なんかではその辺にメスが入れられているような気がします。『ロードス島戦記』『スレイヤーズ』のヒーローとヒロインの関係に比べ、『エヴァ』のそれはかなり希薄な感じになっていると思います。そもそも『エヴァ』ではシンジに対応するヒロインが誰なのかということ自体があいまいです。そうい一見複雑っぽい人間関係も同作品がうけた数ある要素の一つなんだと私は思っています(まあ、レイやアスカやミサトはその後「複数乱立するヒロインキャラ」という別の方向で消費され尽くされていくのですが)。
 で、この話ではそんな人間関係をもうちょっと前に進めて、よりありふれた人間関係を描こうとしています。というのは、何のヒロイン的個性もないヒロインの存在もそうなんだけど(レイとアスカに比べて、ミーナと本作のヒロインは並び立たないように描かれています)、まっとうなヒロインであるところのミーナを差し置いてポッと出のキャラと恋愛関係に陥る主人公辺りに凝縮されています。しかもアースは作中でミーナに関して一切触れないので、一体どっちが本命か分からない感じになっています。
 そういうのってファンタジーものの主人公としてはどうか、といった感じがありますが*1、普通の男性にならありそうだよな…みたいな変なリアリティをファンタジーものに盛り込みたかったのだと思います。こまっしゃくれた高校生ですね。


 あと、途中で何か政治っぽい話をしていますが、これはこの頃私が政治に興味に持ち出したからとかではなく、単に漢文の授業が好きで、そういったテイストを作品に持ち込みたかったからです。でもこうしてみると作品コンセプトが乖離していて変な感じですし、そもそも漢文の授業にインスパイアされて書いたようにはとても見えません。なんかあまり意味のない盛り込みに思えます。微笑ましいですね。


 ちなみにタイトル「ムシデン」と作中の最後に使われている歌詞ですが、これは私が小学6年生の時に習った歌のものです。確かドイツの民謡で、タイトルは「Muss i denn」という綴りだったと思います。私はドイツ語は分からないのですが、その歌の邦題が「わかれ」なのでたぶんそういう意味なのでしょう。「Must I leave」くらいの意味かしら。
 作品タイトルにもらっておきながら、未だに意味すら調べていない私です。

*1:例えば『イース』というゲームの主人公・アドルは行く先々でヒロインをこしらえて恋愛したりしていたように思いますが、同シリーズは『寅さん』みたいに固有のヒロインという存在がそもそも存在しなかったので割と自然でした。